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2人は息を切らせながら林を抜け、民家が集まる所まで来ると振り返る。
ビクターに追い返されたとはいえ、何だか自分達が彼を置いてきてしまった様に思えた。
彼が筏を作る理由や、どうして独りでいるのかが気になる。
怖い態度を取られたが、見るからに楽しそうだった。
大人に止められている事をしているのだから。
「き とか くさ に なって、おどかしてみましょ」
フィオの奇妙な提案にジェドは顔を歪めるが、ビクターを驚かすというのは名案に思えた。
酷い態度を取られたのだから、仕返しをして謝らせたいところだ。
食事を終えてから寝るまでの時間もまた、自由な時間がある。
ビクターはその時間、カーテンで隔たりを作り、寝床で何かをしている。
また時々、周りの目を見計らって窓から抜け出している事をジェドは知っていた。
1度それを見ていたところが彼にばれて、睨まれた事がある。
しかしそれを大人に告げ口した事はない。
秘密を共有している様で、少し楽しかった。
その脱走が今夜起こり得るかもしれず、思わず悪戯な笑みを浮かべる。
夜になると天気が急変し、星々は厚い雲に覆われた。
冷風のお陰で昼間よりは心地よいが、つまりそれは雨が降る事を意味する。
空気の臭いでそう嗅ぎつけたジェドは、林の入り口まで急いだ。
家を出る理由として、フィオに返し忘れた積み木があると言ってみたところ、カイル達はこれを愛らしく笑い、寧ろ喜んで見送ってくれた。
勘違いをされては困ると、ジェドは昼間に見つけた枝を握ってフィオを待ち構える。
別に、ビクターをこらしめるためにフィオの力が一時的に必要なだけであり、仲良くしているのではない。
と、フィオが提案した事などそっちのけだ。
その時、背後の草むらが騒いだ。
ジェドは振り返るや否や、そこから手足が伸び、思わず声を上げて後退る。
それを追いかける様にフィオの笑い声がした。
いつからそこにいたのか分からなかったのは、無理もない。
彼女の頭や身体には草木や蔓が巻きつけられ、見事なカモフラージュが施されていた。
フィオはふと真顔になると、同じ変装道具をジェドに突き出す。
ジェドはそれに笑いが込み上げた。
自分も共に変装する事よりも、彼女の恰好や動作が可笑しく、腹が捩れた。
いつまで笑っているのかと、フィオは彼を急かしながら、ビクターはどうしたのかを訊ねてみる。
予想通り、筏を見に出て行ったそうだ。
「あいつ、ぜってーびっくりする!」
準備を整えたジェドは、草だらけの恰好で悪戯に笑うと、フィオを率いた。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
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その他作品も含め
気が向きましたら是非