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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第四話 だから 必要だった
59/154

(21)




※4人の回想を終え、現実に戻ります。







 黒い稲妻が巡り続ける4つのキューブに、シャンやシャンディア、リヴィアが怒りの声を上げると、中の4人への被害を惜しみながらも攻撃を放った。




 リヴィアの手に斧が戻った途端、振り翳される。

そこに散りばめられた竜の瞳を模した藍色の石が光ると、他の精霊達が眼光を稲妻に変え、太い刃に送り込んだ。

合わさった力は青白い光に変わると、その場一帯を照らす。

リヴィアは鋭利な眼をキューブに向けたまま竜の叫びを轟かせ、斧を振り下ろした。




 片や、歯を鳴らしたシャンは2本の槍を交差し、巨大な白銀の刃を生み出した。

そこに重なったのはシャンディアが投げた鏡のブーメランだが、これまで以上に大きなそれは、鮫の歯の様に細かな先端が光る。




 空と海の術が同時に放たれた時、キューブを囲む黒い稲妻が断たれた。

亀裂の音が広がると、瞬く間に砕かれていく。

宙で解放された覇気を失った4人は、呆気なく海に落ちた。




 先回りしていた2人の精霊がジェドとビクターを、追いついたミラー族がフィオとシェナを受け止め、島へ引き返した。




 コアは透かさず砕かれたキューブの破片を操ると、そのまま、消耗した神々に投下する。

また一方で、舞い散るままの破片は島にも降り注いだ。






 中でも東の島の者達の顔が蒼白する。

迫る破片の表面が映し出す4人のとんでもない過去や、自分達の当時も容赦なく掘り起こされた。

抜け落ちていたフィオの母親の存在や、不可解な獣の異変によって人が豹変した事件。

そして、崩れ果てた世界には未だ奴隷的拘束が存在している可能性がある事だ。




 4人は岸辺に上げられたものの、立とうとしない。

グリフィンとカイルは堪らず、誰よりも先に飛び出した。

その後からグレンが追いつき、レオまで駆けていく。




 しかしマージェスは足が竦むと、崩れ落ちて呼吸を荒げた。

それに群がる仲間だが、触れられたくない一心で乱暴に振り払う。

そこへしつこく近付く者がおり、苦しみと怒りに歪めた顔を上げては、退くように怒号を放つのだが――頬を叩かれ、視界に光が散った。




「しっかりしなさいよっ……」




ライリーは、これまでの被害ですっかり容姿が乱れていた。

下ろされた髪から汚水が滴っている。

彼女は事態に困惑する周囲も余所に、己を見失うマージェスを強引に抱き寄せた。




 数々の欠片の表面に映された、事の瞬間。

命を硝煙と海に消したあの瞬間だけが切り取られ、彼の目の前に突き付けられた。

ライリーは、それが脳に焼き付けられると、悟った。




「それでもジェドは生きてる……仲間は死なずに済んだ……だから私達はここにいる……」




これが正しいなどとは言わないが、それでもいつか、誰かに返したいと思ってきた事がある。

マージェスの顔を見るつもりはないが、どうやら落ち着いたのか、息が緩やかになっていくのを感じた。

ライリーは、熱くなる目から零れ落ちそうになるものを呑み、顔を上げる。

そこに、自分以外に誰も見える事のない過去の大切な人物を見てしまった途端――片目から一筋が伝った。




「マージェス……あんたは必要なのっ……」









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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