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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第四話 だから 必要だった
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(15)




 同乗していた1人が、この奇妙な事態から何かに気付くと、隣の者に耳打ちをした。

聞くと、地元でニュースになっていた不可解な獣の騒動と関係するのではないかという。




 エドは顔が強張る中、ボートの男性を見つめたまま考える。

態勢が整っていない今、襲われでもしたら陸に辿り着くまでに全員死ぬだろう。

仮説が正しければ、相手はそういう生き物だ。

しかし、その子どもは一体どうしたのだろうか。




「ったく。そんな怖ぇ顔すんなよ、旦那!

見ろよ、こっちにも餓鬼がいる。

一緒にいけば、その子もいい相手になんだろうよ」




よく通る活発な声をした青年は笑うと、足元に座る女性が抱えていた1人の男の子を指した次の瞬間――




 ジェドは暗闇で、激しい横揺れによって大きく転倒する。

騒ぎにすぐさま立ち上がると、父を振り向かせようと叫んだ。

そして、そこにいるであろう長老やマージェス、レックスを大声で呼び続ける。

それでも、その世界に現在の自分はおらず、事は進んでしまう。




 (いかだ)に男性の上半身が乗っかった。

本来ならば着地できた筈が、体力が想像以上に消耗しており、飛び移る事ができなかった。

何より、負傷した足の激痛に沈みかけてしまう。

激しい揺れが、ボートの子どもを刺激していた。




 人々は悲鳴を上げ、男性から距離を取ろうとする。

しかし手が強張って舵を取れずにいた。




 男性は上体を持ち上げ、灰色の眼を見張ると共に銀髪に打って変わり、トレンチコート越しに一回り膨張した体格を見せると、けたたましい獣の威嚇の声を放った。

喰わせろという一心が豹変を招き、引っ掻く様に人々に手を伸ばす。




 人々は筏の端に目一杯寄るが、危機から免れる筈もなかった。

男性はいよいよ筏に乗り上げようとする。




「落ち着け!

助け合おうって言ってんだ、こっちは!」




舵を取り切れなかった金髪の青年が咄嗟にオールを握ると、男性を一時的に気を失わせて引き上げる策に出た。

筏の縁から勢いよく浮上した男性の頭を目掛けて、オールで1撃を喰らわせる。

それによろめいた相手だが、オールも破損した。




 ジェドは視界の外での騒ぎを止めるべく、そこら中を蹴って自分の居所を伝えようとした。

聞こえたカイルの声からすると、そちらへ移った父に攻撃をしているに違いない。

直ちに止めてもらいたいがあまり、体温が一気に熱くなり始めた。

そして叫び続ける声に獣の声が紛れても、こちらを振り向いてもらいたい一心で気付かなかった。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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