(3)
そこには筏の材料が散らばっていた。
どこから運んできたのかは分からないが、重過ぎる丸太は毎日1本ずつ集めている様だ。
縄を作る蔓草も纏められているが、果たして編めるのだろうか。
いくら島の子どもの中で1番大きいからといって、筏を立派に作れるほどの知恵はないだろう。
それに随分と小さいが、本当に浮かぶのだろうか。
2人はそんな事を考えながら、周囲に気を配るのもすっかり忘れ、そこら中を漁り始める。
「マージュスのおっちゃんに、きいたのかしら」
「おいちゃんが? むりって いうだろ」
「なわ、ここから ゆるゆるよ」
「き、ぼこぼこだな」
「さわんな」
2人は声を上げて飛び上がると、数歩先で転んだ。
海を出入りしていたずぶ濡れのビクターは、片手にナイフを握り、集めた新しい蔓を担いでいる。
「どけ」
言われなくともだと、2人は尻で後退る。
これまでにないほどの高圧的な態度だった。
海鳥が獲物を喰らおうとする様子と同じだと、ジェドはビクターの横顔をまじまじと見つめる。
ビクターはそれ以上何を言うでもなく、黙々と筏作りに取りかかった。
ジェドはこの時、自分がやるのに比べ、彼の手捌きは優れていると思った。
しかし大人に比べると全くであり、やはり首を傾げる。
「ほんとに できんのかよ、それ」
つい零してしまったジェドに、ビクターは流し目を向けると、足元に転がっていた小枝を2人に投げつけた。
向こうへ行けと言わんばかりのそれに、フィオは引き下がるどころかまたも素早く四つん這いになると、前のめりになる。
「ナイフ、なーんでもってんの?」
それもそうだ。
盗みでもしない限り有り得なかった。
フィオは一度だけ触れた事があったが、すぐさま家の者に取り上げられてしまった。
「カイルにおこられっぞ」
ジェドの一言に、ビクターは眉に怒りを這わせた。
「えらそうに いうなっ! よそもんのくせにっ!
ひっこんでろっ!」
彼は更に木や小石を2人に投げつける。
これ以上の反発は危険だと、2人は声を上げて逃げてしまった。
邪魔者を見届けると、ビクターは作業に戻る。
大きな震災があり、誰もが家族ばらばらになった。
自分もジェドも同じだ。
フィオは島で生まれたと聞いているが、環境の悪さや病気のせいで両親を亡くし、独りぼっちになっている。
そんな様々な事情を抱える者が集まり、まるで家族の様に過ごす空間に、違和感があった。
子どもの自分を憐れむ大人の目や、育てられるのかと不安がる様子が視界に入るのが嫌だった。
そんなある時、1人で暮らそうと思いついた。
しかしできる事はまだまだ少なく、どうしてもカイル達の家に帰らないと腹を十分に満たせない上に、知恵も得られなかった。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
投稿通知・作品画像宣伝中
インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非




