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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第一話 東の島の出来事
5/154

(3)




 そこには(いかだ)の材料が散らばっていた。

どこから運んできたのかは分からないが、重過ぎる丸太は毎日1本ずつ集めている様だ。

縄を作る蔓草(つるくさ)も纏められているが、果たして編めるのだろうか。

いくら島の子どもの中で1番大きいからといって、筏を立派に作れるほどの知恵はないだろう。

それに随分と小さいが、本当に浮かぶのだろうか。

2人はそんな事を考えながら、周囲に気を配るのもすっかり忘れ、そこら中を漁り始める。




「マージ()スのおっちゃんに、きいたのかしら」



「お()ちゃんが? むりって いうだろ」



「なわ、ここから ゆるゆるよ」



「き、ぼこぼこだな」



「さわんな」




2人は声を上げて飛び上がると、数歩先で転んだ。

海を出入りしていたずぶ濡れのビクターは、片手にナイフを握り、集めた新しい蔓を担いでいる。




「どけ」




言われなくともだと、2人は尻で後退(あとずさ)る。

これまでにないほどの高圧的な態度だった。

海鳥が獲物を喰らおうとする様子と同じだと、ジェドはビクターの横顔をまじまじと見つめる。




 ビクターはそれ以上何を言うでもなく、黙々と筏作りに取りかかった。

ジェドはこの時、自分がやるのに比べ、彼の手捌きは優れていると思った。

しかし大人に比べると全くであり、やはり首を傾げる。




「ほんとに できんのかよ、それ」




つい零してしまったジェドに、ビクターは流し目を向けると、足元に転がっていた小枝を2人に投げつけた。

向こうへ行けと言わんばかりのそれに、フィオは引き下がるどころかまたも素早く四つん這いになると、前のめりになる。




「ナイフ、なーんでもってんの?」




それもそうだ。

盗みでもしない限り有り得なかった。

フィオは一度だけ触れた事があったが、すぐさま家の者に取り上げられてしまった。




「カイルにおこられっぞ」




ジェドの一言に、ビクターは眉に怒りを這わせた。




「えらそうに いうなっ! よそもんのくせにっ!

ひっこんでろっ!」




彼は更に木や小石を2人に投げつける。

これ以上の反発は危険だと、2人は声を上げて逃げてしまった。




 邪魔者を見届けると、ビクターは作業に戻る。

大きな震災があり、誰もが家族ばらばらになった。

自分もジェドも同じだ。

フィオは島で生まれたと聞いているが、環境の悪さや病気のせいで両親を亡くし、独りぼっちになっている。

そんな様々な事情を抱える者が集まり、まるで家族の様に過ごす空間に、違和感があった。

子どもの自分を憐れむ大人の目や、育てられるのかと不安がる様子が視界に入るのが嫌だった。




 そんなある時、1人で暮らそうと思いついた。

しかしできる事はまだまだ少なく、どうしてもカイル達の家に帰らないと腹を十分に満たせない上に、知恵も得られなかった。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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