表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第一話 東の島の出来事
4/154

(2)




 ジェドは、フィオが顔を覗き込んだ拍子に頬に落ちた雫を拭うと、更に目を尖らせる。




「ぬれたじゃねぇか!

およいだんなら、ふいて こい!」



「ふいて こい? また きていいの?」



「そんなわけあるか!」



「こいって いったー!」




フィオはまた彼を笑い飛ばす。

苛立ったジェドは立ち上がると、荒々しく砂を払い除けて林に向かった。

後を追おうとするフィオはふと、置き去りにされていた長い枝を拾うと、そのまま忍び足で彼に近付き、背中を突いてやる。




「やめろよ! ……あ、それ! かえせ!」




いい太さをした丈夫なそれは、持ち帰って武器にしようとしていた貴重なものだ。

大人達が扱う槍の様に、魚を獲って暮らせるようになろうと思っていたというのに。




「やーよ。わたしが、ひろったの。ほしいのー?

ほーら、ほーら!」




フィオは揶揄うと枝を両手で握り締め、一目散に走り去ってしまう。






 彼女の脚は速いが、走り慣れているのはお互い様だ。

それにジェドは、こんなチビに足の速さで負けたくないと、植物を激しく掻き分けながら追いかける。




 2人はまるで獣道を作る様に走り抜けて、障害物など軽々跳び越えてしまう。

しかしフィオは、長過ぎる枝が辺りの木々にぶつかり、進行を妨げられるとそのままジェドに首根っこを掴まれ、共に転倒してしまった。




 斜面でバランスを崩した2人は、木から落ちた果実の様に転げていく。

ぴんと生える植物の葉や枝に引っ掛かれ、身体にはまた小傷が増えた。

 (ようや)く止まると、真っ先に上体を起こしたジェドは、透かさずフィオの手から枝を奪って立ち上がる。

その時、足首を取られてまた転んだ。




「いってぇな!」



「しーっ!」




ジェドは目を瞬く。

フィオに静かにと指を突き立てられると、そそくさと茂みに身を潜めた。




 草の隙間から見えるのは、誰かが肩に縄を掛け、1本の丸太を懸命に引いて歩く姿だ。




「ビクター、また はこんでる」




またとはどういう事だとジェドは首を傾げるが、フィオは眉を寄せ、まるでこの事を知らないのかと言いた気だ。




 ジェドは知る由もなかった。

食事の時と寝る時にしか顔を合わせず、ゆっくり話した事もないのだから。

事情を聞いたフィオは大きな目を瞬き、肩を竦める。

一緒に住んでいる友達がいない彼女からすれば、彼等が羨ましかった。

しかし本人達の様子を聞くと、あまり楽しくなさそうだ。




「いつも ああして、き を はこんでるの」



「なんか つくんのか?」



「しらなーい。きいてみたら?」




そうこう話している内にビクターを見失ってしまう。

2人は茂みから顔を出すと、彼が置き去りにした丸太まで近付いてみた。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ