(6)
島の人々は、欠片にさらされた過去の事象や数々の声に、ただ立ち尽くす。
コアは、欠片の1つたりとも逃さんと、全身から影を滾らせて両腕を開いた。
散りばめられていた欠片が収集されていくと、耳障りで、目障りなこれらを赦さんと示す様に、腹の光が憎悪に震えて蠢く。
穢れなき世界が見たい。
そこに生きていたい。
そうすれば、元の自分を取り戻せるだろうから。
「何という体たらくだ……人類よ!」
コアは吠え飛ばすと、集めた欠片で新たな壁を複数生成し、東の島に向けて片腕を払った。
ミラー族と竜の精霊達は絶句する。
目にも留まらぬ速さで生み出された壁の進行は、彼等に次の手を打つ間を与えようとはしない。
紫の光で象られたコアによる鏡の壁は、風を颯爽と切りながら4人に襲いかかる。
通過する風圧によって波や飛沫が立ち、追いかける神々の接近を妨げていく。
「皆逃げて!」
シャンディアの言葉さえも、迫る壁は断ち切ってしまう。
シャンは2本の槍から鎖を放ち、壁を巻き取ろうとした。
それを追う様に、後のミラー族が銛や鏡のブーメランで壁を打ち砕こうとする。
竜の精霊達は稲妻の矢を放ちながら、守護神の竜をはじめ、炎の雨を降らせた。
人々は迫りくる鏡の壁に絶叫する。
紫の光の尾を引くそれらに続くのは、まるで複数の隕石が降り注ぐ様な欠片の数々だ。
更にその後方から神々の力が合わさる防御術が接近するのが、激しい振動によって明らかになる。
これが何を意味するのか、特に東の住民達と4人が瞬時に悟った。
見てはいけないとされる巨大な鏡の接近。
それらは次第に分裂していくと、4人に分配する様に散った。
「やめろ……やめろ!
フィオ、シェナ、ジェド、ビクター! 離れろ!」
怒鳴らずにはいられなかった長老を、グリフィンからマージェス、カイル、グレンが追い抜いて行く。
4人と共にいた子ども達は悲鳴を上げ、あまりの恐怖に彼等から離れようとしない。
しかし皆を巻き込まぬよう、4人は子ども達を力尽くで引き剥がしては乱暴に押し退ける。
駆けつけた大人達が押しやられた子ども達を受け止めると、更に4人に腕を伸ばす。
4人は皆の手を掴もうとするも、目と鼻の先まで追いついた鏡の壁は音を立ててキューブと化し、まるで口を開く様に4人それぞれを呑み込み、封じた。
事態は4人の声を呆気なく断ち切り、回転しながら宙に浮上してしまう。
それと入れ替わりに、歯止めが利かなくなった神々による防御術が島に当たった。
家屋が稲妻と炎に焼かれ、鎖と銛と鏡のブーメランで打ち砕かれてしまう。
放心状態に陥る一帯を前に、コアは狂気の笑いを溢しながら腕を操り、4つのキューブを引き寄せていく。
ミラー族は、真似られた術がコアの力によって拍車がかかっている事に怒り、震える眼差しを向ける。
黒い稲妻が囲むように奔るキューブは、精霊達による炎や雷でも打ち破れなかった。
憤怒したリヴィアは竜の叫声を天に轟かせた途端、最悪の事態に斧を握り潰した。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
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その他作品も含め
気が向きましたら是非