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陸で共存してきたコアは、環境そのものの変化の他、人の変化もまた多く見てきた。
土や根を這い進んでいく中で耳にした様々な心地よい声が、自身の原動力に変わっていく。
それによって魔力がより生成され、地の広さに応じて体格を自在に変えながら、根を伸ばし、緑化を進めてきた。
従者の蟲を率いて、受粉や土壌形成などを促す事で、産業や科学、医学の発展に繋げた。
また、蟲が食料に変わる事で生命を支えた。だが、力をくれる様な声ばかりではなかった。
地域振興を図るリゾートホテル建設が決まり、海岸や道路の工事がなされる事になった。
反対派の者達は意見書を手に、責任者に訴える。
彼等は、道の舗装やライフライン確保に沿った森林伐採、狭い面積に関わらず海が埋め立てられる事、それにより起こり得る海への影響や、観光客のマナーなどを懸念していた。
しかし、返答は期待できるものではなかった。
「その地域の売りを前面に出して、多くの目に留まるようにする。
過疎地域対策も貢献の1つよ。
そこに更に色々と聞き入れて、気が付けば結局利益にならないなんてオチじゃ、意味が無いでしょう。
やっていくためには犠牲はつきものなんだから」
重機で地面を均しては締め固め、砕石を撒いて更に敷き均しをする。
熱したアスファルト混合物が加わり、道は再び均され締め固められた。
其々の工程の間には、ストレートアスファルトと水分からなる乳剤が接着の役割として散布された。
交通重荷を分散させ、路床にかかる負荷を小さくする事で、道路の安定した支持力を得る。
工事は厳重に進められた。
場所によっては鉄筋を縦断方向に配置し、コンクリートを流して圧力をかけ、新たな道や地面が生み出されていった。
建設が進む横では、企業側の者達が次の段取りをしている。
世に浸透し始めた環境に配慮するべき事など、分かっていた。
わざわざ指摘されなくとも、既に導入を進めている。
社会の持続可能性に向き合う姿勢を企業として取らなければ、勤め先に選ばれる事も減り、支持もされにくくなるからだ。
しかし、いざ取り組めば、その逆が目に付く事もまた多かった。
ただの見せかけだと口にされる事や、胡散臭さが余計に目立つとされ、企業が遠ざけられる実態があった。
正直、掲げられた理想の数々に振り回され、面倒な事ばかりに思う。
そして運営が始まれば、新たな声も聞こえてくるのは自然な事だ。
「高い代金を支払って、いざ部屋に入ったらアメニティが全く揃ってないなんて。
環境がどうのって、神経質な……ただのコスト削減だろう。
社員の手間をなくそうとしてるだけだ。
旅先でくらい、気を抜かせてもらいたいね」
「ちっぽけな部分を削減したって、変わりはしないわ。
それに心配し過ぎなのよ。
温暖化なんてほとんどがフェイクらしいじゃない。
所詮、利益の為の発信で、ただの“おはなし”なのよ」
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
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インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非