(3)
※自然科学要素、現代要素を、
大地の神の視点より3話でお送りします。
コアは混乱する神々を嘲笑う中、淀む痛みに息を荒げていた。
憎悪と怒りに紛れる悲しみで、眼光が明滅する。
心や時を映し出すミラー族の魔力による継続的な被害は、意識を遠ざけるほど目まぐるしい速さで、己の過去をもさらけ出していた。
数十億もの人々による考えや文化の違いが対立し、国境線や資源を巡る争いが生じた。
暴力や戦車、戦闘機などの軍事力が解決手段として扱われると、安全を失い、多くの難民が出た。
命が奪われる危機を目前に生きる人々の嘆き悲しむ姿は、地を引き摺られ、擦りつけられ、地中に響き渡ると多くの血と涙に変わり、滲みていった。
医療を受けられず、通学も叶わないそこでは、年齢構わず銃器を持つか、或いは強制労働が生じた。
失われていく土地や緑の復旧を続けたコアは、悲痛な面持ちを浮かべる人々に寄り添う様に、幾つもの花を咲かせて癒した。
人口の増加に伴い、確保するべき食料が増え、多くの畑や農地、牧草地が必要とされた。
しかし、木材や燃料の確保のために行われた過度の伐採により、土の保水力が落ち、風や雨水で地面が削られる事態が起きた。
過耕作では土の養分が尽き、土地の生産性が下がる事もしばしばだ。
過放牧では植物を過剰に食べ尽くされる事で、植物の回復が追いつかなくなった。
コアは身体から根を張り巡らせて種子や苗を運ぶも、それらの成長が追いつかない事が自然になりつつあった。
またその裏側では、利益を得る目的や生計を立てるため、違法伐採や密輸が行われた。
プランテーション開発が招いた熱帯雨林の減少は、気候危機の加速の要因に繋がるのみならず、泥炭地にも影響を及ぼした。
水や炭素を蓄える役割を担う泥炭から排水をし、土地を乾燥させる事で作物栽培や水田開発、都市開発のための面積を広げた。
整地をするための早い手段として火入れが用いられる事から、森林火災のリスクが上がった。
コアは生物達が焼き滅ぼされるのを防ごうと、眼光を誘導灯として浮遊させ、他の森に移動させた。
そして深い根を張り巡らせた木々の間や、頑丈な土壌の中へ導き、安全を確保した。
十分な水を蓄えた森によって、生物達の命は免れた。
しかしこの大移動は繰り返され、その度に失われる森林の回復には殆ど手が回らなかった。
人の国境移動が盛んになった事で外来生物が増え、本来の生態系が壊される事態が相次いだ。
飼育放棄や意図的な放出によるものもあり、作物の被害や水生生物、両生類の捕食が起きた。
コアは、野放しの生物達によって生態バランスが崩壊されないよう、蔦や木の根で路を作り、其々の生物達に適した環境へ導いた。
そうして人の生活環境や、食生活を守ろうと尽力した。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
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その他作品も含め
気が向きましたら是非