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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第三話 しかし 豹変は止まなかった
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(1)



※1350字でお送りします。

 自然科学要素を、空の神の視点で語ります。






 空の神が見たのは、狂奔(きょうほん)して飛び回る己の姿と、押し寄せる世界の異変だった。






 活発な人間活動によって上昇し始めた世界の気温は、気候変動を招いた。

海水温が上がり、氷河が溶けだした事で海面上昇が起こると、小さな島は浸水の危機に晒された。

多くの住民が、移転や避難、立ち退きを余儀なくされ、故郷を去った。




 陸地の浸水によって引き起こされる塩害や、地下水に海水が侵入する事で、飲み水の確保が難しくなる。

その様なリスクを避けようと、神々は各所で滞りなく動き続けてきた。




 精霊達は、上昇した海水温より発生した大量の水蒸気の解消に務めていた。

ハリケーンや台風、集中豪雨の頻発、洪水や高潮といった水害を防ぐ事で、陸の生命を維持してきた。




 しかし気温上昇は減るどころか増すばかりであり、異常な雨量を招く一方で旱魃(かんばつ)も相次いだ。

生きるために育てた作物が枯れ、収穫の大幅減少が起こり、経済に影響を及ぼした。




 川の水が減り、船舶の運航の際は積荷を減らさざるを得なくなった。

更には水力発電が低下し、テクノロジー開発に遅れをきたした。




 続く乾燥の回避に追いつけなかったが故に、熱帯林火災が起き、大量の煙や煤塵(ばいじん)が放出された影響で、大気汚染が生じた。

有害物質に犯された精霊達は、飛翔力や火を噴く力を失いかけるだけでなく、汚れた空気に呑まれて命までも失いかけた。




 しかし間髪入れずに襲いかかる異常気象は、偏った雨量により衛生状態を悪化させ、主に蚊を通じて感染症が広まった。




 化石燃料の燃焼のほか、至る所で放出され続ける汚染物質が増えるにつれ、地球が熱を宇宙に放出できなくなり、大気中に熱が蓄積していった。

植物や森林が伐採される事によって、植物で蓄えられていた水が失われ、水不足を招いた。

同時に、大気を浄化する役割も減った。




 精霊達は、数十億と増え続ける生命の維持に務めるべく、空気の浄化と天候の安定に身を粉にしてきた。

海面上昇によって限られた飲み水が失われないよう、熱された地表や大気を冷ますために飛行を繰り返し、風を上手く捕まえながら空気循環を続けた。




 竜達は大量の雲を操り、太陽を覆い隠す事で海や大気の温度を下げ、海の酸性化の防止に務めていた。

また、集めた雲の中に氷粒(こおりつぶ)を蓄え、それらが打ち合う現象から電荷(でんか)を貯めた。

雷や落雷を引き起こす事で植物に必要な栄養分を与え、成長を後押しした。




 世界が眠る事を殆どしなくなると、空の神はただ務めに追われ、迫る熱気や汚染物から逃げる様に魔力を放出し続けた。








 空の神が身を削る思いで飛行を繰り返していた日々や、その最中に負った疲労、抱いてきた恐怖心や不安に混ざる怒りや焦燥が、コアが操る欠片に浮き彫りになる。




 リヴィアはこれに両拳を握り、全身を震わせ、胸を抉られる思いに駆られた。

空や大気の目まぐるしい変動に敗れた仲間もいる。

守り切れなかった悲しみは、後に憎しみに変わる事もあった。

大気を蘇らせるために、生命や仲間の心を休めるためにある歌すらも、喉が嗄れて歌えずに終わる事も珍しくなかった。




 精霊達は、欠片がさらす過去の自分達の姿を打ち消そうと刃を振るい、矢を放つ。

それらが掻き立ててくる腹立たしい感情や、心を亡くすほどに宙を舞う辛さが、人間の目に触れてしまう事を恐れ、只管に薙ぎ払い続けた。

コアに何も言い返せないまま、ただ、我武者羅に。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
どうもです! 自然の災害はやはり恐ろしいですね(-_-;) 精霊や竜たちが、人類存続のために身を粉にして奮闘する姿は感嘆の声を漏らすほど感動しました! 人間もその思いに応えて欲しいものですね(o^-'…
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