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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第二話 どんな時も 共に在ろうとした
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(14)




 リヴィアがその場から離れると、使者である子どもの竜が、救助された精霊の手元に炎を噴いていく。

精霊は合わさる炎を掴むと新たな鎌が出現し、一振りしては颯爽と加勢に向かった。




 海洋生物の間から浮上したシャンは、合流したリヴィアを仰ぐ。

コアが彼女を目掛けて腕を掲げた時、槍から鎖を伸ばして拘束した。




 攻撃を免れたリヴィアは、一時動きが鈍くなるコアを睥睨(へいげい)しては、辺りに竜の声を放って鎮める。

その声の意味を悟ったシャンもまた、鏡の眼光で仲間に停戦を促した。

一帯が静まるや否や、(シャチ)海豚(イルカ)が、どこか焦燥を溢す様に潮を吹く。




 シャンの鎖がコアのもう片方の腕も雁字搦めにするが、コアは抵抗せずリヴィアを睨み返すに留まる。

威嚇による震えが、絡みつく鎖を伝った。

シャンは、コアが眼光以外にも全身が怒りに熱を帯びているのを槍から感じ取る。

耳には、憎悪が混ざる緩やかな息遣いが流れ込んだ。

コアの腹に蠢く灰色の光は1つ、また1つと増え、きりがない様を見せつける。

ここ一帯を占める神々の怒りや苦痛もまた、コアは自らの動力に変えようと吸収し続けていた。




「いつまでも眩みおって……」




コアの低く(こも)る声は、微かな声量でありながらも人々にまで鮮明に届き、振り向かせる。

リヴィアは、眼光が増す眼を細めた。




「其方がな……どうだ、久方振りの己の地は……こよなく愛でてきた命の姿は……これは果たして、望んでいた光景か……」



「否……未だ、邪魔がおるでな……」




互いに守る存在でありながら、原型を失くして醜く変わり果てたものだと、リヴィアは憐みの眼で見下ろす。

空島に浮上した魔女を化身に、声を放っていたコアだが、身を縛られる思いだった。

当時は姿を捉えられなかったが、これが大地だというのかと困惑を隠せない。




「怒りはいずれ根を腐らせ、荒野と化す……枯れ行くだけの未来だ……そんな事も忘れたか……己の力だけで地球が成り立つものか……」




とんだ思考の歪みに呆れ、リヴィアは冷笑を浮かべる。




「その眼も平和を得たあまり浮かれたな……あの異質がそんなに愛おしいか……」




コアは、自身を聞き入れる耳を失う神々に失笑する。

人類の破滅を人類で行う。

その道具として生み出した呪いの血。

それに抗うべくして誕生したとされる、神の血を引く者の血。

所詮、それらもまた道具に過ぎない。

何れも吸収して力を融合させれば、呆気なく人間を消し飛ばせる。




「だとすれば何だ……其方もまた、彼等に導かれる運命……その鋼を外せば、嘗ての視野や従者も戻ろう……もう喚くな……」




リヴィアは斧の角度を変え、刃を光らせる。




「戯言を……穢れしか残さん人間共の居場所はあらんっ!」




コアは語気を強めると同時に鎖に抗い、両腕を振り上げた。

刹那、一切の前触れもなく、広範囲に渡って蓄積する海洋ゴミが高々と浮上する。

反動の波でミラー族の体勢が乱れ、宙で構える精霊達が衝撃を喰らった。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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