(13)
海からの鏡のブーメランや、空からの火矢や刃の数多の煌めきが、夜を眩く染める。
しかしコアへの衝撃は僅かなもので、戦士達は鎮静を果たせず焦燥するばかりだった。
コアは再生して硬化した腕で、麓から海中に引き込もうとするミラー族や海洋生物達を押し戻していく。
重石として身体に纏わりつく鏡の墨は、みるみるうちに砕かれていった。
低空飛行で海面を移動して見せたコアだが、その先で再び守護神の竜に足止めを喰らう。
翼のはためきで起こる高波と大風が、コアの進行を押し留めた。
しかしコアは、激しく舞い上がる飛沫と水柱の合間から灼熱の眼光を放つ。
それを受けた竜は、熱さに悲鳴を轟かせながら逃げる様に浮上し、コアの頭上目掛けて紺碧の炎を噴いた。
猛り狂う竜に汗を滲ませる精霊達や、ミラー族が更に加勢する。空と海に満ちた闇を幾多も駆け巡る彼等の飛行や泳ぎは、光の尾を引きながらコアを取り囲んでいく。
それはまるで、流星痕を巨大な円状に描いている様だった。
目まぐるしく行き交う光や炎に、コアの眼が揺らぐ。
その隙を突かれ、ミラー族による鏡のブーメランの攻撃が、腹の複数の光に命中した。
多くの苦痛を吸収して肥大した燻んだ光は、大気に泡として解放され、弾ける。
それによる激痛と原動力の減少の怒りに、コアは眼光をミラー族や海洋生物に降らせた。
それは形を変え、呪いの根源である陽炎になる。
それに触れられるまいと、ミラー族は瞬時に鏡の盾で弾き返した。
また竜の精霊達は、炎を連続的に吹きつけて陽炎を焼き尽くしていく。
コアは憎しみに駆られ、同じ神や、守り通してきた生命を呪い殺そうとした。
そこに隙を見たのは1人の精霊だ。
目元から頭部を白銀の鱗でできた兜で包み、竜と同じ群青の鬣をした髪を細かく靡かせている。
揺れる衣は夜空に溶け込む様で、その隙間から伸びる逞しい両腕が鎌を握り、刃に群青の眼光を滑らせた。
前傾姿勢で宙を直進すると鎌を振り翳し、コアの明々と光る熱を帯びた眼に狙いを定める。
守護神の竜の眼球と同等の大きさをするそこに、精霊の姿が浮かんだ。
コアは冷笑すると、陽炎を絡めた眼光を飛ばす。
精霊は間一髪、攻撃を薙ぎ払えたものの、鎌は柄の半ばから断たれた。
マグマがそこを這って溶かしていくと、手元に到達しかかるところで投げ捨てる。
それと入れ替わりに、コアの拳が精霊の目と鼻の先まで接近する。
遥か彼方へ吹き飛ぶ未来が過った、その刹那、リヴィアはその精霊を抱えるとコアの拳を喰らう寸前で回避した。
2人が一時退避する最中、身体を竜の鱗の装甲で覆う別の精霊達がコアに突撃する。
剣と盾を炎を交えて操る彼等は、4人が空島で目にする事のなかった新たな竜の戦士達だった。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
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