(12)
ビクターは、つい零してしまった負の感情を完全に抑えきれずにいる中、レオが言う本当にするべき事について考えていた。
隣で沖を睨むジェドを見ると、焦燥と迷いが滲んだ顔から、似た様な心境が覗える。
そんな2人の頭に、グリフィンが手を乗せた。
沖での戦いを気にしながらのそれは、少々忙しない。
「どうしてああなってしまったのかを、知る必要があるんだろう?」
グリフィンはジェドを僅かに覗き込む。
目を合わせようとしない彼の眼差しが、細くなる。
ジェドは、シェナが思い出したリヴィアの言葉を何度も胸でなぞり続けていた。
こんな乱れた状態では向き合えないという事も、分かっている。
それでもまだ、自分が抱えているものを恐れていた。
何かを招く可能性があるのは確かだろう。
それをどの様にコントロールし、皆と共に突き進む事ができるのか。
不安は拭いきれなかった。
「地球を救う判断は間違っちゃいない。
過酷だろうが、1人じゃない」
グリフィンはビクターの肩を掴むと、彼を見つめる。
1人ではないと口にするのは初めてではない。
空島の再起は、1人ではどうにもならなかった。
呪われたリヴィアにどんなに接触しても、それだけでは救えなかった。
そんな時、魔女の悪戯で幸運にも出会えた東の島の皆が、力をくれた。
4人が諦めずに事態と向き合ったお陰で、自分は砂から復活できた。
ビクターは、頷くグリフィンを暫く見つめた後、ジェドに徐に拳を突き出す。
それに気付いたジェドはそっと、目を震わせながら微かに顔を向けた。
「まだ……やれるだろ……?」
ビクターの枯れた声は、どうにか友達を振り向かせようとする。
いつからか、自分が勝手にその役割を担ってきた。
まだ、続けられるだろう。
そう言い聞かせる様に、しかし友達には、本来の目的を達成する気力を確かめる様に、声を絞り出した。
涙を引っ込めたシェナは、ビクターのもう片方の腕にしがみ付くと、勇ましい目を向ける。
長老とアリーに包まれていたフィオも、洟をすすってビクターを振り返った。
神々の光と雷光の点滅が紛れ込み、時折放たれる竜の青い炎が、合わさる4人の目に決断の火を燃やす。
「助けてやろうぜ……俺等は、助けられてきたんだからよ……」
突き出されたビクターの拳に漸く、3人の拳が合わさった。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
投稿通知・作品画像宣伝中
インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非