(11)
「シェナ」
リヴィアの柔らかな声に、シェナと共に皆が振り向いた。
リヴィアは浮かび始めると、遠方からの仲間達の光や竜の炎の灯を受けながら、眼光を増していく。
力強い戦士の眼差しのまま、ふと微笑んだ。
「もう一度、思い出して……」
それだけを言い残すと片手に斧を握り、コアに向かって飛翔した。
4人は間も無く沖へ加わるリヴィアを、不安に満ちた目で追う。
そんな彼等の背中をじっと眺めていた誰かが、ひび割れたサングラスに手を翳してやってきた。
「君達に出来る事は、本当は何だい」
コアによる波の攻撃で、人々は酷い被害を受けていた。
それでも4人に向き合い、明かされたフィオの真実など関係無く、普段通り接してくれた。
「あのでっかいの……今も俺達が踏みしめている大地なんだろう? ありゃあどうにかしてやらないと……とは言っても、俺は目を開けるのも堪えるんだが……」
レオは、神々が放つ光に億劫になっていた。
彼の目を守るレンズは砕けかけている。
それを目の当たりにした4人は、動きやすい身体を持つ自分達を改めて見つめた。
同じ身体でも違いがあった。
それに苦しめられたが、力に変える事もできた。
今は揉め事の要因になり、纏まった束が解けてしまっている。
それでももう一度束ねようとしたくなるのは、単純に、大事だからだ。
束ねておけば、失くなりはしない。
また、そうしておけば、失くなっている事にも気付けるだろうから。
「その目や力は必ず皆を導く……決して恐れるな……力は正しく使うためにある……あなた達にはそれができる……信じて前に進みなさい……」
シェナは涙声で、リヴィアの声に掻き立てられて浮かんだ言葉を呟いた。
南に出かける前にも思い出した、大切な言葉だ。
これを機に周囲は、自分達を送り出す気になってくれた。
そして自分達は、信じて出かける気になれた。
フィオの胸には、空島から戻る直前にくれたリヴィアの“大丈夫”がこだまする。
この言葉が自分達の信念となり、貫くと。
なのにこの瞬間まで忘れてしまっていた事に、堪らず震える口元を押さえた。
アリーに支えられながら歩み寄った長老は、すっかり背が伸びたフィオを改めて見上げては、大きく抱き寄せる。
「おかえり」
優しく落ちたその言葉が、フィオの胸の器に溜まった忍耐を一気に溢れさせた。
滝の様な涙は、長老の服を濡らしていく。
包んでくれる温かい手は熱すぎるほどで、海水を浴びた後の冷えなど一切感じさせない。
縺れて汚れた髪ごと、全てを受け入れ、長老は愛でてくれた。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
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その他作品も含め
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