(7)
両者のやり取りは一瞬とはいえ、長い時が流れていたと錯覚させる。
その間、人々の胸に重く淀むものを残した。
「貴方は分かっておられる。
彼等は、ここで生きていけると。
そのためにも、大地を戻さなければならない」
「……先に行け」
リヴィアはシャンディアを見ないまま、彼女に仲間との合流を促した。
シャンディアは一度フィオを見て、それから後の3人と、人々を見回した。
彼等は整理が追いつかない状況に立ち尽くしてはいても、フィオを放すまいとその腕を掴んでいる。
そこから向けられる鋭い視線を、シャンディアは暫し受け止めると、何も言わずに海へ飛び込んだ。
リヴィアは4人に振り向く。
あまりにも皮肉な再会であり、未だ、誰も声を出せないでいた。
リヴィアが彼等に近付くにつれ、皆の表情がより強張っていく。
次は何を言い、何をするのか。
恐怖がリヴィアの接近と共に押し寄せるにつれ、人々や4人は後退ってしまう。
その足取りよりも、リヴィアがフィオに追いつくのが速かった。
フィオは感情のやり場だけでなく、自身の居場所に迷う様を露わにし、瞳を震わせては太い涙の筋を伝わせていた。
後から涙声が漏れると、傷の痛みと胸痛に、身が震える。
心を搔き乱す幾つもの要因の内、最初にすぐ取り除けるのは
「ジェド」
リヴィアは、絶望を語る空っぽの手を下げる彼に手を差し伸べる。
ジェドは顔を上げると、彼女の淡い青に灯る眼に心の中の何もかもを覗かれた様な感覚に陥る。
表情は厳めしいが、声は優しく、あの時の歌声によく似ていた。
シャンがいた際の空気や、彼女が向ける刃は、ミラー族とはまた違っている気がした。
差し伸べられた美しい純白の手を眺めると、己を責め立てていた荒ぶる感情が少しずつ和らいでいく。
そしてある事を思い出した途端、その手の上に自らの手を重ねた。
ジェドの行いを見たシェナとビクターが、反射的に駆け付ける。
次は自分が助ける番だと、シェナは誰よりもフィオの前に割って出た。
そしてリヴィアを振り返ると、彼女はゆっくりと頷いた。
フィオもまた察すると、震える唇を結んで固く目を瞑る。
シェナをはじめ、3人の手がフィオの傷口に重なると、最後にリヴィアの手が合わさる。
不安に冷え切った手の温度が、皆の心配する震えが、傷の奥深くにまで入り込んでいく。
少し痛いが、苦しくはなかった。
呪いの広がりを一早く喰い止めると、そこに狙いが定まり、撃ち砕かれる。
その後、柔らかな風が浄化していく。
そんな動きが体内で素早く繰り返されるのを感じたフィオは、友達や、共に暮らしてきた大人達の存在を瞼の向こうで感じ取る。
失うには大き過ぎる存在だ。
生まれた愛や絆を守るためにできる事を考えるにつれ、眼が震える。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
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その他作品も含め
気が向きましたら是非