(6)
「ほうっ……」
リヴィアが重きを置く点に、シャンは、フィオだけでなくビクターの影を見る。
それに汗を滲ませ、苦笑を浮かべるのがやっとだった。
「無論、其方等が送り込んだものに何も思わぬ訳もないがなっ!」
「そんな、違う! 違います!」
シャンディアは堪らず2人の仲介に入る。
「竜の女王、私達は決して天に呪いを追いやったのではない! お分かりでしょう、1つの力だけでは相手を断ち切る事などできなかった」
リヴィアは斧の手を緩めるも、引かなかった。
コアが生み出した紛い物の魔女が、島を呪った。
それを断ち切るためには、他ならぬ彼等の力が必要だった。
この状況に呆気に取られている4人に、リヴィアは僅かに視線を向ける。
彼等と初めて顔を合わせた際に嗅ぎつけた、異質の血のニオイ。
魔女は、コアは、彼等を求めた。
人類を消し飛ばす力を得るには十分な材料だろう。
しかしその偉力は、4人は、そのための存在ではない。
何故ならそこには、人の血も流れているのだから。
「神ならば潔く在れ……我々は人間ではないぞ」
邪魔なシャンの声が、更にリヴィアの焦燥を掻き立てた。
彼もまた、斧を押しやる力を緩めない。
「この選択は未来のため。世の生物全ての、だ。
守るには時として手段も選ばんとなぁ……何をそんなにお怒りか……其方も気付いていたというのに……あの子等が迎える、今日を」
リヴィアは眼を見張り、シャンを半端な力で突き放す。
微動だにしないシャンは、槍を静かに消すといよいよコアに向かおうとする。
まるで人間に対して心を失くした様な態度だが、その本心を知るシャンディアはリヴィアに首だけで否定する。
「狂ったものだなっ……人間は従者ではあらんぞっ……」
リヴィアは背を向けたまま、冷徹なシャンに静かに溢す。
彼は激戦区に向かう間際で足を止めた。
「我々は生命の維持のために責務を全うするまで……」
曇る顔を見せないまま告げると、彼はフィオに眼を向ける。
そしてそこに、先代オルガを重ねた。
よく似ている姿こそ、いつかに言い遺された僅かなる再会を意味しているのか。
「好きで下すものか……こうせざるを得なくなったのも、自然現象にすぎん」
耳を疑う発言にリヴィアが大きく振り返った矢先、シャンの槍が喉を突きかける。
「増援には礼を言うが、一貫した眼を持たん内は足手まといだ、女王。我等だけでやれるのか。その子なくして。俺にはそれが見えんがなぁ」
彼は槍を引くと颯爽と海へ消え去った。
荒波を突っ切り、激戦区の仲間の状況に眼を光らせる。
彼等は俊敏さを維持し、戦い続けていた。
コアは空中からの攻撃に少なからず痛手を負っている。
浮上を妨げられている今、このまま鎮静に追い込めるかと、シャンは泳ぐ速度を更に速めた。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
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その他作品も含め
気が向きましたら是非