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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第二話 どんな時も 共に在ろうとした
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(3)




 皆の記憶から抜け落ちていた、フィオの母親の記憶。

歪である理由が繋がろうとする中で、東の住民達は声を失くした。




「其方の母は陸の生命の危機を案じ、禁忌を破る決断をした……そうしてでも守り……愛したいものができたが故にだ……しかし」




シャンは未だ何も放たない長老に向き直る。

長老は凍りついた様になりながらも、どうにか首だけで微かに否定して見せた。




「何においても代償はつきものだろう、長殿。こちらも世の生命を守るためだ」




それでも、受け入れられなかった。




「シャンと言ったな……その子の父親は、これを認めた上で死んだかっ……その子の母は、何と言い残したっ……その子の両親は、シャンっ! お前達一族に帰すよう、言い残したのかっ!?」




溢れ出た感情が、長老の胸を激しく打ち続ける。

だがその発言はシャンを揺るがしもせず、冷たい視線に逸らされていった。

フィオにも後の3人にも留まる事のない光の眼は、遥か沖で空の神と戦う一族に向くと、焦りが滲みだす。




「先代は許しやしない!」




再び脚を持ったシャンディアは銀に灯る眼を尖らせ、シャンにこれまで以上に噛みつく。




「フィオは一族で守るべき生命を想う一方、ここの人達を家族として愛してる! この子達の力があって私達の今の姿があるというのに、傷つける様な事をしないで!」




途端、シャンは肩に掴みかかるシャンディアを押しやり、眼光越しに睨みつける。




「傷つけるな……? こちらの言葉だろうっ……!」




震えるのは怒りか、それとも悔いか。

顔や眼差しに滲む多くの感情は、どれも決して心地良いものではなかった。

もう2度と惨劇を繰り返さないための選択を、誤る訳にはいかない。




「従者ならば揺らぐな、シャンディア……お前は神だ、見極めろ……この騒動の発端が何かをっ……」




その時、止まれというグリフィンの叫びを掻き消す様に、駆け足の音が接近した。

シャンが振り向いた矢先、ビクターとシェナ、そしてジェドがこれまでにないほどの剣幕で彼に襲い掛かり、槍とナイフの(きっさき)がそこまで迫る。




 しかし、シャンは2本の槍でそれらを軽々と撥ね退けた。

3人の一本調子の我武者羅な攻撃は、あっさり地面に打ちつけられる。




「静まれ……お前達を痛めつけようとしているのではない……」




それでも尚も立ち上がろうとしたジェドに、シャンは透かさず槍を向けて制止した。




「その腕、(しか)と見せてもらった。

後は我等と、その子で片す」



「黙りなさい! あたし達の友達よっ!

どこにも行かせないわっ!」




シェナはシャンに砂を蹴って吠え飛ばすも、彼は相手にせずビクターに眼を尖らせた。




「渡してもらおうか」



「嫌だって言ったら?」




ビクターは、()うに知られていた飾りの在り処を、腰を引いて遠ざけた。




「その子が許さんだろうな」









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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