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※1330字でお送りします。
コアは断たれた腕を押さえながら、再来した空の神を声無く嘲笑う。
精霊達は眼差しをより尖らせ、竜の声で威嚇した。
天を再び呪わせてなるものかと言わんばかりに憤り、武器を握る手を強めて攻撃の機を覗う。
コアは負傷部から緩やかに手を放して見せた。
そこから滾る影は、早くも新たな腕を形成し始めている。
「空も未だ眩んでおる……毒に塗れた大気に……酸にっ!」
言い終わりと共に再生した腕をリヴィアに向けて振った。
巨大な木の根の様な腕は強度を増している。
だがリヴィアは守護神の竜と共に、迫る腕の風圧を瞬く間に飛翔して切り抜けては消えてしまう。
その場に開かれていた雷雲の間は、雷鳴を響かせながら稲妻によって閉じられ、元の空色を取り戻していった。
島では人々が、後から吹きつけた竜の翼による風圧に陸の奥まで押しやられる。
この事態に特に度肝を抜かれたのは、南の住民達だ。
出没した竜や飛び交う精霊達を恐れ、建屋の殆どが大破した東の島で身を潜める場所を探し回る。
グリフィンや漁師達は4人の手を引き、海から離れようとした。
しかしフィオだけは大人達の腕を振り解き、相変わらず髪の下に顔を隠してしまう。
それに足を止めたジェドが何かを察し、彼女に近付いていく。
足取りは徐々に速まり、踏み込む力も増してしまう。
徐に伸びる手は、顔を背けたフィオに触れようとするのだが
「言ったろう」
シャンがジェドを振り向かせた途端、傍のシャンディアが、彼が言おうとしている事に震えて首を振る。
だが口出しするよりも先に、それは切り出された。
「預けるのは一時的だ。
今や、その時……その子を返してもらう」
ジェドが目を尖らせるところに、ビクターとシェナが駆けつけた。
シャンの発言に、大人達は訳が分からずいよいよ喚く。
「何を言っとるんだ!
この子は、ここで生まれた子だろう!」
適当な事を言うなと真っ先に声を上げたのは、4人が気がかりでならず飛び出したスタンリーだ。
4人は誰よりも率先して前に立ち、危険を掻い潜って漸く戻ったというのに、返せとはどういうつもりなのか。
フィオの目は震え、次第に両手が頬に触れると耳にのぼり、塞ぐ。
激しく打ち鳴らす鼓動が、熱と痛みをいっそう促してくる。
それでも立っていられるこの異変こそが、決定的なものではないか。
そう思えば思うほど、息が上がった。
「我が一族の先代オルガが命と引き換えに遺した……その子は、次代筆頭だ……」
「何をっ……!?」
グレンはあまりの衝撃に声が枯れている。
それを押し退けて前に出たのは、レックスだ。
「でたらめ言いやがって! 急に出てきて偉そうに!
シャンディアはそんな事言わなかったぞ!」
4人を島の者へ返すという彼女との約束に、大人達は声を荒げる。
その傍ら、4人はただただシャンに瞼を失っていた。
身体が動かない中、3人は、こちらに何の反応も示さないフィオを眺めるのに精一杯だった。
シェナが涙を伝わせる隣で、ビクターは装備ベルト越しに例の飾りを握る。
「人間の血を通わせる異質の力こそが、地球を動かす。いずれ大地が怒りと狂いに呑まれると予知した、彼女の母の決断だ……」
シャンはフィオに眼光を向ける。
彼女は絡まる髪の隙間から怯える目を覗かせていた。
母という信じられない言葉の受け止め方が、全く分からなかった。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
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インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非