表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第二話 どんな時も 共に在ろうとした
17/154

(2)



※1330字でお送りします。






 コアは断たれた腕を押さえながら、再来した空の神を声無く嘲笑う。




 精霊達は眼差しをより尖らせ、竜の声で威嚇した。

天を再び呪わせてなるものかと言わんばかりに憤り、武器を握る手を強めて攻撃の機を覗う。




 コアは負傷部から緩やかに手を放して見せた。

そこから滾る影は、早くも新たな腕を形成し始めている。




「空も未だ眩んでおる……毒に塗れた大気に……酸にっ!」




言い終わりと共に再生した腕をリヴィアに向けて振った。

巨大な木の根の様な腕は強度を増している。

だがリヴィアは守護神の竜と共に、迫る腕の風圧を瞬く間に飛翔して切り抜けては消えてしまう。

その場に開かれていた雷雲の間は、雷鳴を響かせながら稲妻によって閉じられ、元の空色を取り戻していった。




 島では人々が、後から吹きつけた竜の翼による風圧に陸の奥まで押しやられる。

この事態に特に度肝を抜かれたのは、南の住民達だ。

出没した竜や飛び交う精霊達を恐れ、建屋の殆どが大破した東の島で身を潜める場所を探し回る。




 グリフィンや漁師達は4人の手を引き、海から離れようとした。

しかしフィオだけは大人達の腕を振り解き、相変わらず髪の下に顔を隠してしまう。




 それに足を止めたジェドが何かを察し、彼女に近付いていく。

足取りは徐々に速まり、踏み込む力も増してしまう。

徐に伸びる手は、顔を背けたフィオに触れようとするのだが




「言ったろう」




シャンがジェドを振り向かせた途端、傍のシャンディアが、彼が言おうとしている事に震えて首を振る。

だが口出しするよりも先に、それは切り出された。




「預けるのは一時的だ。

今や、その時……その子を返してもらう」




ジェドが目を尖らせるところに、ビクターとシェナが駆けつけた。




 シャンの発言に、大人達は訳が分からずいよいよ喚く。




「何を言っとるんだ!

この子は、ここで生まれた子だろう!」




適当な事を言うなと真っ先に声を上げたのは、4人が気がかりでならず飛び出したスタンリーだ。

4人は誰よりも率先して前に立ち、危険を()(くぐ)って(ようや)く戻ったというのに、返せとはどういうつもりなのか。




 フィオの目は震え、次第に両手が頬に触れると耳にのぼり、塞ぐ。

激しく打ち鳴らす鼓動が、熱と痛みをいっそう促してくる。

それでも立っていられるこの異変こそが、決定的なものではないか。

そう思えば思うほど、息が上がった。




「我が一族の先代オルガが命と引き換えに遺した……その子は、次代筆頭だ……」



「何をっ……!?」




グレンはあまりの衝撃に声が枯れている。

それを押し退けて前に出たのは、レックスだ。




「でたらめ言いやがって! 急に出てきて偉そうに!

シャンディアはそんな事言わなかったぞ!」




4人を島の者へ返すという彼女との約束に、大人達は声を荒げる。

その傍ら、4人はただただシャンに瞼を失っていた。

身体が動かない中、3人は、こちらに何の反応も示さないフィオを眺めるのに精一杯だった。

シェナが涙を伝わせる隣で、ビクターは装備ベルト越しに例の飾りを握る。




「人間の血を通わせる異質の力こそが、地球を動かす。いずれ大地が怒りと狂いに呑まれると予知した、彼女の母の決断だ……」




シャンはフィオに眼光を向ける。

彼女は絡まる髪の隙間から怯える目を覗かせていた。

母という信じられない言葉の受け止め方が、全く分からなかった。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ