表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第二話 どんな時も 共に在ろうとした
16/154

(1)



【大海の冒険者~人魚の伝説~】

Epilogue: 大海の冒険者 抜粋



フィオは自然と変わった鏡の双眼を大きく見開くと、漸く離れた3人を見た。その視線に気付いた皆は、彼女を大きく振り返る。

その瞳に映し出された信じ難い光景は、互いがこれまでも共に在り、乗り越えて来た証に変わる。

そして4人は再び、天を仰いだ。



※1560字でお送りします。






挿絵(By みてみん)



 長い夜は、歪な豪雨によって不穏さを増していく。

その1滴1滴は雫でありながら鉛の様に重く、負の感情を纏い変わり果てた大地の神を打ちつけていた。




 サタンと化したコアの真っ赤な眼光が、仮面を伝い落ちる雨に光る。

熱を帯びたそれは、雨粒を一瞬にして蒸発させた。




 コアを地中に引き摺り込むべく、海の神ミラー族筆頭シャンの指令のもと、海洋生物達による攻撃が続いていた。

しかしコアはそれを撥ね退け、いよいよ宙に浮上しようとする。

その頭上では、黒雲を舐める様に這う青白い稲妻が後を絶たない。

これにはコアのみならず、麓の皆までもがただならぬ気配を感じていた。




 東の島の浜で構えていたミラー族は、再びコアに突撃する。

彼等は黒い荒海を難なく進み、白銀の閃光を引きながら消えた。




 薙ぎ払われていた海洋生物達は、追いついたミラー族による回復の光を受けると、再び攻撃に移る。




 空の異変を仰ぎ見るフィオとジェド、シェナ、そしてビクターが察するものは、わざわざ声に出すまでもない。

フィオは鏡の双眼を見開いたまま、3人の傍へ急いだ。




 コアは麓からの攻撃に僅かに唸りながらも、高々と片腕を掲げる。

4人や周囲の視線に絡みつくうざったい期待に、眼が熱されていった。




「命乞いをしたとて地球(ここ)を守れまい……血をよこせ……終わらせてやる!」




語気を強めながら掲げた片腕から黒い球体が浮かび上がると、発生した重力が幾つもの雷に変わる。

それらは太さを増すと、糸の様に浜へ伸びては4人の足に絡みつき、一思いに浅瀬に引き摺り込んだ。




 悲鳴を上げる彼等に大人達が駆けつけ、腕や胴体を抱えて止めにかかる。

引き合いになるのも束の間、塊になった人々は易々(やすやす)と海に導かれてしまう。




 シャンは咄嗟に槍を振り翳し、守備に就く従者シャンディアは鏡のブーメランを出現させると、黒い雷の糸を切りにかかった。

この時シェナが、身の危険に(おのの)くと涙声で叫んだ。




「助けてーっ!」




彼女の喉に忽ち金の光の根が迸った時、再び招かれた旋風が雷雲をより厚く嵩張らせた。

生きた様に膨張していく雲は、周囲一帯を威圧する。






 青白い光が天を染め尽くしたのが先かーー身が砕けんばかりの雷鳴が轟いた途端、一筋の太い群青の火柱がコアに降りかかる。

同時に、落雷がコアの掲げた腕を突っ切った。




 4人を引き寄せる力が断たれると、皆は一気に体勢を崩す。

青い炎の海が広がるそこでは、断裂されたコアの腕が燃えながら落ちた。

それを見届けるまでに起こる連続的な天の異変に誰しもが声を上げ、瞼を失った。




 数多の稲光が這う先に現れたのは、まるで雲の扉か。

両端に重々しく寄せられた奥に現れた巨大な両眼は、群青の光を鋭利に放つ月に等しい。

それらの反射光を受ける鼻筋の鱗は、銀の光の羅列を際立たせ、憤る息に揺れる2本の髭が生きた様に宙を泳ぐ。

低い唸り声を立てながら牙を光らせた時、空島の守護神 竜は、長い咆哮の激流を起こした。




 大気や地面の揺れに、皆は体勢を保ちきれない。

咆哮による振動で横殴りになる雨の中、周囲の音が遠ざかり、まるで耳が壊れた様だ。




 4人は海で身を起こしながら空を見上げると、視界に飛び込んだものに肌が粟立つ。

例え位置が遠くとも、彼等の鋼の音は鮮明に響き渡った。

空島を訪れた当時よりも圧倒的に増えた竜の精霊達が、剣や鎌、矢をコアに向けながら睥睨(へいげい)していた。

群青色の眼に純白の肌。

重なるパール色の衣に銀と白の光を泳がせ、手足首の銀の装飾が威厳さを見せていた。

風に揺れるそれぞれの白銀の髪には、髪飾りに埋められた青い石が光る。




 天で翼を広げた竜が頭を低くした時、使者である数頭の子どもの竜が次々に現れた後、その者は姿を見せた。




「「リヴィア!」」




輪郭がぼやけていようとも、彼等は、彼女は、確かにそこにいる。

4人はリヴィアが構える銀の斧に目が留まった。

その刃には、僅かに影が揺らいでいた。




挿絵(By みてみん)









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ