表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
最終話 地球と人の未来のために
151/154

(13)




 ジェドは、船縁に繋ぐ網に背を預け、うたた寝をしていた。

海に傾き、危うく落ちかけるところで網を掴む。

だが、もっと別の事に驚かされ、瞼を失った。




 辺りを見回すと、船は安定して進んでいる。

フィオは船室におり、ビクターは舳先で何かを考えている。

シェナは、相変わらず見張り台の守だ。

誰1人、声を出していない様だ。

では一体、誰が歌っていたのだろう。




 両足を海側へ放り出す。

夢を見てぼうっとする頭を起こそうと、冷たい潮風を深く吸い込んでは、そっと吐いていく。

そこへ、言葉が押し寄せてきたかと思うと、不意に縁を掴んだ。




 風に身体を押され、仰け反ってしまう。

生きた様なそれは一瞬のもので、奇妙なあまり、首を傾げた。

すると、まるで小さな泡が沸々と上る様に、言葉の羅列が頭に浮かんだ。




 ジェドは慌てて飛び降りると、船室に急ぐ。






 開いたままのそこには、フィオが、ずっとテーブルで書き物をしていた。

アルミ缶のランタンが、淡い光の間を揺らしている。




 フィオは、何度も書いては消してを繰り返さないよう、できるだけ、頭で文章を決めてから手を動かす。

見て感じたものや、知った事を人々に広めたいと考えており、グリフィンから聞いた、作家という職業に興味を持った。

ただ書いて伝えるのではなく、現在も皆で作り上げようとしている伝説の本の様に、手に取った人をその世界へ導く様に語る、という事をしてみたかった。




 それがいかに難しいかを痛感しており、頭を抱える。

そのお陰で、隣にジェドが腰掛けた途端、飛び上がった。

だが、彼は構わず、目の前に積まれた真っ新なページを1枚取ると、尖らせた墨を取る。




「……何? 珍しいわね」




何も言わず、墨の先を走らせる彼に、フィオはうんと近付いた。

ジェドは身体の向きを変え、見られないよう、背中を盾にする。




「話しかけるな。忘れちまう」




そう言うと、急に作文に集中し始めた。

フィオは1文を苦労して落とし込むというのに、彼は、滑らかに何文も連ねてしまう。

これに信じられず、少し悔しくなるのだが、それも通り越し、現れる文面に釘付けになる。




 ジェドには、前々から聞こえていた音があった。

夢を見る度に聞こえていた訳ではないが、聞こえた時は必ず、その音の出所や、音の意味を探りたい気持ちに駆られていた。

繋がりをもたないそれは、何年もかけて向き合っている伝説の本の様に、なかなか形になってくれなかった。




 だがある時、生き物の鳴き声が、何を訴えているのかを理解する夢を見た。

その事を書き起こしてから、音が聞こえる夢では、搔い摘んでだが、自分達が話す言語として聞こえるようになった。

しかし、それもすぐには繋がらず、目が覚めた途端に忘れてしまうばかりで、苛立った事もある。

考える事を止めようとした時もあったが、そんな時に限って、それは再び夢に出てきた。




 そして今、恐らく完成形であろう言葉の羅列が、一気に押し寄せた。

こんな感覚は初めてで、書き進める手は止まらない。

また見失ってしまう様な気がして、焦っていた。

何年もかけて、(ようや)く鮮明になったこれらが、もう一度見られるとは考えにくかった。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月6日 完結


当日は 以下の3投稿です


・第十話 最終ページ

・エピローグ 1投稿

・あとがき


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ