表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
最終話 地球と人の未来のために
150/154

(12)




 舳先に腹這いになるビクターは、遠くを眺めている。

そこに長くいられるように、わざわざ平らに作っていた。

その大切な居場所で、大人達から聞いてきた、嘗ての話を思い出す。




 何事も過度に行えば、どこかで負荷が生じる。

何かに大きく偏り過ぎては、もう一方で気にかけるべき事に、力を出せなくなる。




 自分が成長すればするほど、世界が広くなればなるほど、旅に出れば出るほど、1つの事だけに目を向ける訳にはいかない。

そう思っていても難しいという事を、出発前のグリフィンは言いたかったのだろうか。




 自分達がしたいと思っている事に、できっこないと言う誰かがいるだろう。

自分達が熟すだけでは、変わらないと思う時もある。

だが、そう思い続けてしまうと、それこそ変わらない気がした。




 海の割合が増えた世界で、当たり前の様に生きている。

大人達は、嘗ての世界の再来を願っていた。

自分達も、それを見てみたいと思う。

それに加えて、当時よりも優しい世界になるよう、願っている。




 大人の仲間入りをしたばかりの自分達の心は、まだ幼い。

そんな自分達が語ったり、描いたりするものが、これまでの様に、真っ直ぐ通じるばかりではない。

そんな事もまた、グリフィンは意識させたかったのだろうか。




 面倒な事ばかりが続き、構うべきものに構う余裕がなくなり、自分の事だけで精一杯になり、そういうものだと流れていく。

そんな生活を送っていた時を振り返る大人達の顔は、あまり楽しそうではなかった。

それを見て、漠然とだが、もっと楽しい世界にできないだろうかと思う。




 大人達の中には、この世界に生まれ落ちた自分達を、気の毒に思う者もいる。

だが、それは違った。

自分達は、この生き方に確かな幸せを感じている。




 家族や友達がおり、火があり、水や海がある。

自然によって、自然と生かされている事は、ありがたい事ではないだろうか。






 仰向けになると、月と目が合った。

そこから引き出されたのは、いつか聞いた、ライリーの言葉だった。




 一度、世界がなくなればいいと思っていた時がある。

それが叶い、ホッとしたことがある、と。

共に聞いていた長老は、それに対し、長い沈黙を生んだ後、そうかもしれないと返していた。




 意味深な2人に、何を言う訳でもなかったが、内心、身震いしていた。

壊れてしまった方がいい世界も、人も、本当はない筈だろう。

それでも、壊れてしまったのだ。

それをどの様に修繕し、新たに作り上げるのかは、言うまでもなく、残った生命や環境次第になる。




 こうして思いを巡らせる事もまた、容易い。

自分が勉強を遠ざけるために、あらゆる言い訳や、逃げる作戦が思い浮かぶ様に、やらない理由やできない理由は、簡単に浮かんでしまうという事も教わった。

それを噛み締めているからこそ、こうして旅に出ている。

もっと、世界を知るために。

誰かの声を聞き、環境を見るために。




 見てきた断片的な夢を振り返ると、身体が疲れたり、妙に力が入り、重くなる。

まるで、この場にいながら、実際に夢の中に入って動いている様で、疲労感や熱が湧く。

何故なのかは未だに分からないが、突き詰める事を諦める気には、どうしてもなれなかった。

するべき事があると教えてくれている。

今は、そう解釈している。




 ちっぽけな自分達が、まず、やるべき事は、この旅を無事に終える事だ。

そして大きな、大き過ぎる夢だが、叶えてみたい。

生命と環境に深く関心を持ち、その声を聞ける世界の誕生を。

持続的に守っていくために。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月6日 完結


当日は 以下の3投稿です


・第十話 最終ページ

・エピローグ 1投稿

・あとがき


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
どうもです(^∇^) ゲームで負けたら虫を食べさせられるなんて、考えただけでゾッとします((( ;゜Д゜))) どこかの国か民族で食べるシーンテレビで見たことがありますが、やはりそれを見たとき「うえー…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ