(11)
夕方に南を発ち、長い夜の航海が続いていた。
月明かりは、緊張している4人を見守る様だった。
風に耳を欹てるシェナは、見張り台で丸くなっている。
何かが見えてこないかと、瞬きも忘れ、待ち構えていた。
風は冷たく、ローブを内側に引く。
ふと、月を見上げると、近くを瞬く星を1つ1つ、視線で結んだ。
晴れた空が味方してくれており、北斗七星が、くっきりと浮かんでいる。
柄杓に当たる部分の2つ星を結んだ長さを、5倍に伸ばす。
そこに光る北極星を、何度確かめたか、数えきれない。
風の変化にも、神経を研ぎ澄ませていた。
運ばれてくる香りで、陸の接近を感知し、温度の変化で、天候を判断してきた。
誰よりも素早く。
独りで過ごす間は、喉に触る癖が出る。
ここに共存するものを理解し、有りの儘でいられるのは、この島に来て、友達ができたお陰だ。
そんな素晴らしい彼等は、自分の故郷へ、ついて来てくれる。
皆は、其々にやりたい事を見つけている様だが、自分は、そういったものをまだ見つけられていない。
何にでも興味があるが故に、決められない。
だが、この声があるからこそ、できる事を見つけたいと思っている。
今、それが何となく叶っている様な気がした。
仲間を、安全に目的地へ導く事。
それがいつしか、多くの人々や物事を導く事になるならば、自分の務めなのかもしれない。
考えが途切れ、目を見開く。
姿からしてちっぽけな自分が、随分と大きな未来を見ているものだと、小さく笑い飛ばした。
ビクターとジェドは、先ほど、ボードゲームで騒いでいたが、落ち着いている。
旅の殆どを海の上で過ごすのだから、遊び道具も必要だと、フィオが積んだものだ。
誰が使うのかと言っていた当の2人が、結局、最も楽しんでいた。
カラハという、先読みと駆け引きが発生する世界最古のゲームを、グリフィンから教わった。
6つの穴が横2列に並ぶ板があり、その両側に、互いのゴールポケットである受け皿を置く。
12個の穴に貝殻を4つずつ仕込み、手前半分を、自分の手持ち分とする。
1つの穴の中身を全て取り出し、決まった方向に円を描く様に、隣の穴に1つずつ分配させていく。
そうして、端に備えたゴールポケットを目指し、貝殻を集めていき、手持ちを全て集め切った方の勝利だ。
これは大人も食いつくものであり、彼等がやる場合は、ルールが少し複雑に変わる。
今や、そちらのやり方にのめり込む2人だが、頭の疲れに、ビクターが降参した。
今は、皆が静かな時間を感じている。
互いが見えない場所で過ごしていても、背を向け合っていても、気持ちは楽だった。
背後を任せ合える関係を太く築き上げられたからこそ、この旅に、そこまで大きな恐怖はない。
だが、今夜は落ち着かず、まだ誰も寝床に就こうとしなかった。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月6日 完結
当日は 以下の3投稿です
・第十話 最終ページ
・エピローグ 1投稿
・あとがき
Instagram・本サイト活動報告にて
投稿通知・作品画像宣伝中
インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非