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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
最終話 地球と人の未来のために
148/154

(10)




「でも、そこで目が覚めた。

帰って来たのかどうか、分からない」



「君の隣には誰がいるんだ?

今朝、君が見送ったのは?」




アリーは、グリフィンを大きく振り返る。

と、半端な夢の終わりに囚われ過ぎていた自分を、笑った。

そのまま、顔を隠す様に余所見をする。




 あの子達は戻る。

そう信じて、海を眺めると、途絶える事のない波の音に、火の粉が弾けた。




「何だか、冒険をさせられてる気分だよ。

皆が見た夢が、繋がりそうな気がする。

完成形がどんな風なのかは分からないが、年月をかけている内に、探しものが見つかる様な……上手く言えないが……」



「掘り出してもいいものかどうかも、考えてしまうわね。

否定はしない。

貴方や、子ども達がやる夢の繋ぎ合わせは、私も興味がある。

ただ、そこに隠されている何かは、本当に見つけて欲しいと思っているのかしら……」




グリフィンは、アリーの面白い見解に、墨の欠片とページを置いた。

こちらを見ようとしない彼女の横顔は、そこに浮かぶ月を見るよりも、吸い込まれそうになる。




「見つけてもらいたいと思っていても、やっぱり隠れてしまう。そうやって、私達を弄んでいるのか、それとも、そうする事で忘れられないように気を引かせているのか……振り向いて欲しいと思って目立とうとするくせに、いざ振り向かれそうになると、引っ込んでしまう……知られてからの事を思うと、結局、怖くなるのかもしれない……」




グリフィンは、話を噛み締めながら、波に目を凝らしていた。

だが、口元の手を退かすと、前屈みになっていた上体を徐に上げ、急にアリーを覗き込んだ。




 肩を弾ませたアリーは、笑われると、止めろと言わんばかりに、彼を払い除ける。




「それが君の事なら、他にももっと聞かせてくれないか……」




 浜に立つ松明が、流木に腰掛ける2人の影を、砂浜に揺らす。




 アリーはいつからか、真っ直ぐなグリフィンの目を正面から見る様になり、安心感を得ていた。

多くは話していないが、今日まで、沢山の夢を見てきた。

中でも彼が、どこだか分からない暗闇に消えたり、砂に消えたりしてしまう悪夢は、眠気を遠ざけるほどだった。

その不安を打ち消すものこそが、目の前で共に生きている、彼自身だ。




 じっと静まるアリーの中で、何が起きているかは分からない。

だが、グリフィンは、彼女が独りで心の整理をつけようとしていると分かっていた。

そうしているのだろうと感じる殆どの場合、自分がおり、必ずと言っていいほど、目が合う。

そして、その後、彼女は決まって微笑み、余所見をする。

結局、それを見てしまえば、どんな感覚でいるのかなど、聞く気になれなかった。

その代わり、夜風で冷えた細い手を取ると、そっと包む。




「今夜は長いぞ。あの子達も同じかもしれない。

だから俺達も、起きていられる限り起きて、話しておけば、寂しさも埋められる」



「伝説の始まりにしては、ちょっと昏い気がするわ……」




4人が成人したと意識するだけでも、目が潤んでしまう。

衛生状態も悪い僻地で、信じられない姿を見せてくれているのだから。

そして、果てしない大海に、彼等は出て行ってしまった。

地球と人の未来のためになどと、大きな事を言い残して。




「いや、寧ろその方が自然でいい。

人が語り継ぐ事なんだから」




挿絵(By みてみん)









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月6日 完結


当日は 以下の3投稿です


・第十話 最終ページ

・エピローグ 1投稿

・あとがき


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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