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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
最終話 地球と人の未来のために
147/154

(9)



挿絵(By みてみん)




 その晩。

雲が、すっかりどこかへ取り払われ、月の周りには、星々が瞬いている。






 4人がいない島は心細く、見送ってからの仕事は、あまり捗らなかった。

口にしても消えない気持ちは、食事中にも影響し、いつも賑わっている食卓も、波と火の音が主役になっていた。




 虫の音を横に、漁師達は、レックスの家の玄関横に設けたテーブルで騒いでいる。

大きくなった子ども達が、あまり遊ばなくなったボードゲームを出し、どうにか、寂しさを誤魔化していた。




 近くを通りかかったグリフィンは、遠目でそれを面白がる。

耳を澄ませると、どうやら、負けた者が昆虫を食べるという、子どもじみた勝負をしているようだ。

虫もよく見かけるようになり、昆虫食に挑む機会も増えたのだが、これは、なかなか気が進むものではない。




 と、やけに大きな声がし、肩越しに振り返る。

どうやらグレンが負けたのか、身体を抑えられていた。

彼の口元には、こんがりと焼かれたコオロギが運ばれていく。

とんだ馬鹿騒ぎのお陰で眠れやしないと、仲間の怒鳴り声が横入りした。




 グリフィンは、仕方のない彼等を鼻で笑うと、松明を手に林を進んだ。

もう片方の手には、出来上がった数枚の本のページと、墨の欠片を持ち、海岸を目指した。




 ページになる薄い木材は、生薬として採られた余りの葉を磨り潰して糊に変え、繋ぎ合わせて作っている。

作業場で出たそれらを活用し、教材などに作り変えて使っていた。




 夜は大抵、浜辺で思いついた言葉や、簡単な日記を書く事にしている。

しかし今夜は、別の事で寂しさを埋めようとしていた。






 流木に腰掛け、夢で見たものを書き出していく。

子ども達も続けている事だが、グリフィンは、あまり彼等に見せる気になれなかった。




 沈船に閉じ込められて出られないという、とんでもない悪夢を綴る。

だが、4人に助けられたという、ありがたい落ちのお陰で、目覚めは良かった。




 こんなものが、本のネタになるのか定かではない。

それでも、もしかすると、子ども達にとっては、いい笑いの種になるだろうか。




 考えを巡らせながら、もっと、夢の中に潜っていく。

壊れかけた誰かを、立ち上がらせようとしていた気がした。

それが誰なのかは分からず、顔もぼやけ、まるで、黒い霧の塊に向かって声をかける様だった。

助けたい、守りたいなどと強く言い放っていた。

それは、こんな人生を送るようになって多くを失ったがために、夢になって現れたのだろうか。

分からない誰かがどうなったのか、起きたせいで、結局分からない。






「今日は何を書いてるの?」




 柔らかく耳に触れてくる声に、驚いた事はない。

アリーは、いつも気遣って、遠くから声をかけてくれる。

グリフィンにとって、夜の決まり事の、もう1つの楽しみでもあった。

毎度ではない彼女の訪れに、鼓動も少しばかり速まる。




「また可笑しな夢を書いてる。

でも、それが可笑しいって、やはり心からは思えない」




アリーは小さく頷きながら、彼の隣に腰掛けた。

彼女は、眩しいほどに輝く月を見上げては、そっと海面に視線を下ろし、月の反射光を眺める。




「あの子達、帰ってくるかしら……」



「……何だ、当たり前だろう。どうして?」




アリーは、近頃の夢の話を始めた。




 荒海だというのに、4人だけでなく、グリフィンや漁師達もこぞって、戦いに行くのだと、出ていってしまった。

心配でならなかったが、その気持ちを晴らしたのは、青や銀の光を放つ流星の様な雨だった。

そこに時々見えた、燻んで汚れた光や、見ていて熱を感じる赤い光を、辺りに飛び交う流星や、海に出た皆が掻き消していった。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月6日 完結


当日は 以下の3投稿です


・第十話 最終ページ

・エピローグ 1投稿

・あとがき


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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