(8)
「ビビらせんなよ」
ジェドがつい、零すと、その場は再び賑わっていく。
「さ、風が吹いてるうちに」
シェナは3人を促すと、帆を巻き上げているロープの結び目に向かった。
ロープが解かれると、真新しい帆が風を受ける。
係留ロープを代わりにマージェスは、フィオとジェドに投げ渡した。
「しっかりやれ!
転覆なんかしたら、承知しねぇぞ!
よく目ぇ光らせるんだな!」
4人は、ただ額に了解の合図を示し、海に向く。
見張り台に登ったシェナは、船の押し出しが足りないと見て、縁に腰を乗せると、帆を見ながら息を吸い込む。
(行くよ。押せ!)
力強い息が、喉に金の光を呼び起こすと、顔や首に、光の根が迸る。
柱の軋み音と共に、帆が太く鳴ると、急な追い風が、みるみる船を押し進めた。
早くも秘密基地の孤島を通過し、漁網を仕掛けている位置まで来る。
進みが安定すると、4人は島を振り返り、皆に手を振った。
桟橋の先では、自分達に変わって留守を任せられた子ども達が、飛び跳ねている。
「止まる準備は?」
「問題なし」
フィオの確認に、ジェドが、西に停泊する支度を万全に整えながら返す。
彼は、網を掴んで船縁に立った。
「草が増えたな。何か生ってるかも」
ビクターは、相変わらず船首に腹這いになって呟く。
「……ヤマモモの事? まだ早いでしょ」
フィオは言いながら、緑が増えた西の島の風車を見上げた。
「曇ってんな。雨でも降るのか、シェナ!」
「ご心配なくー」
張り上げたジェドに、彼女の声が、見張り台から真っ直ぐ落ちた。
何年と繰り返してきた動きやコミュニケーションだが、いざ自分達だけとなると、身体は落ち着かない。
ジェドは、気の焦りで、早々に係留ロープを掴んでおりる。
フィオはアンカーの元へすぐに駆け付けられるよう、階段の半ばに座った。
ビクターは、西との距離を何度も目だけで往復する。
シェナは、直ぐ帆を巻き上げられるようにと、もう見張り台から着地していた。
そんな、互いの動きに気付いた途端、船内に長い爆笑の渦が巻き起こった。
風が雲の隙間を抉じ開けていくと、太い光の柱が、幾つも辺りに射し込み、光の中へ彼等を誘った。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月6日 完結
当日は 以下の3投稿です
・第十話 最終ページ
・エピローグ 1投稿
・あとがき
Instagram・本サイト活動報告にて
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インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非