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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
最終話 地球と人の未来のために
142/154

(4)




 いつ訪問しても、必ず火を見て腰掛けていた長老も、アリーや他の仲間の手を借りて、やっと移動ができる。

彼の中で、火を眺めて何かを想う事はルールであり、食後や寝る前は、必ず姿勢を整えねば口煩く急かすようになった。

その際は決まって、使えなくなった杖も求めるのだった。




 青い瞳に炎を映すと、まるで、いつかの自分を取り戻す様に表情が勇ましくなる。

耳に胼胝(たこ)ができるのも通り越してしまうほど、長い昔話を繰り返し、決まったところで笑い、悲しみを見せた。




「じっちゃん、これから行ってくるわね」




フィオをはじめ、ジェドとビクターに、シェナが顔を見せると、付き添っていた子ども達も並ぶ。

4人は、長老に優しく触れながら、こちらを意識させようと目を合わせた。




「なんと……アリー、今日はお客が多いな……」




始まった、とウィルが漏らすと、ケビンやクロイも溜め息を吐き、リサは小さく笑った。

朝一番に顔を見せたところだというのにと、言いかけるのを堪える。




 長老は、緩やかに顔の向きを変えると、島に残る4人に目を見開く。




「いかんなビクター……またそんなもんを持ち出して……大事なもんだと言っとるじゃろ……」



「ちがーうよ、じいーちゃんっ!

これは仕事をするのに貰ったんだ!」




ウィルは慌てて説明するが、長老は、彼の持ち物から目を離さず、置いておくようにとばかり言う。

ビクターはつい、ウィルに苦笑いを浮かべた。




「いいえ長老様、ビクターはこっち。

その隣にジェドと、フィオとシェナがいるんです」




アリーの柔らかな声に誘われながら、長老は、前を向き直る。

彼は、成人した4人を見つめると、首を傾げた。




「ちょっと旅に出てくる。

シェナの元居た場所が、見つかりそうなんだ」




この話も何度目だろうか。

だがビクターは、いつも初めて知らせる様に、丁寧に話す。

こうしてずっと、彼に報告をしてきた。

自分達と同じ様に動けない彼に外の変化を知らせ、長い経験によって積まれた知識と見解を貰い、問題と向き合ってきた。

それもいつまで続くのかと、心のどこかで思ってしまう。




「ほう、旅とは……外国かね……そりゃあいい……行っておいで……」




外国と呼べるほどのものでもないだろうと、アリーと4人は、共に長老に愛らしく微笑む。

その時、ふと、長老が表情を変えた。




「沢山知り、経験しろ……身体に取り込め……その地の幸せが何か……その地の力が何か……補い合えるものが何か……よいか、共に行け。

ただ置いて行くのではなく……」




懸命に伝えるそれには勢いがあり、老いた瞳は、まるで炎そのものだった。

そこに順に映る4人の顔もまた、火を受け継ぐ様に勇ましくなる。

何か大きな決断をする度に、長老から多くの言葉を貰ってきた。

日々、目と鼻の先で共に過ごしていながらも、いつだって、その日が最期であるかの様に。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月6日 完結


当日は 以下の3投稿です


・第十話 最終ページ

・エピローグ 1投稿

・あとがき


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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