(3)
グリフィンの家の玄関では、島で留守番を担う子ども達が群がっている。
「なぁジェド、どうせ獲って食っちまうんだろ?」
装備ベルトに槍を仕舞いながら言うケビンに、ウィルが大きく振り向いた。
「そんなすぐに食べたら増えないよ。まだ子どもだし。それに、肉を食べるより、こいつらには卵を産んでもらわないと」
ウィルは、植物を刈るための鎌の位置を動かしながら、ずっと無口のまま集中するジェドを見下ろす。
「本当に飛べるようになったのかしら?」
髪を綺麗に纏められるようになったリサは、丁寧に編み込み、まるで短髪の様だ。
その様子だと、4人を見送った後は、漁の手伝いに出るのだろう。
「小魚をよく食べてたわ。
それに、暇さえあれば羽を動かそうとしてたもの」
クロイは、怪我をしていた頭黒カモメをじっと見つめる。
1週間ほど前、皆と海で遊んだ帰りに見つけた。
林の中でじっと動かず、弱々しい威嚇だけを放っていた。
当時、漸く飛べるようになったばかりだったかもしれず、翼を動かす以外に、身体は無事の様だった。
ジェドは細かく観察し、痛がる箇所を洗い出すと、折れているかもしれない部分を布で巻き、しばらく固定していた。
長い間、羽を広げられずに不格好で過ごしていたが、患部に触れても痛がらなくなったので、布を解いている。
他に悪いところはないかと、ジェドは、頭黒カモメの嘴を下から掴み、首を左右に動かす。
カモメは、水掻きのついた脚で蹴って抗った。
だが、ジェドの、静かにと細く漏らす息に、ふと大人しくなる。
いつかライリーに、動物を診る医者がいるという話を聞いた。
それ以来、生き物を見つけては、生態を調べるようになった。
ジェドは立ち上がると、両手に海鳥を立たせ、高く差し出す。
羽の広げ方に異常はなく、痛みに妙な声を上げる事もない。
「ほら。行け」
その場で羽ばたいたカモメは、僅かに彼を振り返ると、飛び立った。
子ども達は顔を輝かせ、賑わう声が、忽ち森を満たしていく。
見えなくなるまで空を仰いでいたジェドは、踵を返すと、纏めていた荷物を担いだ。
譲り受けた武器や着替えに、残していた薪や、作りかけのナイフと弓矢がある。
出航してすぐは、西の島の点検を任されており、必要であれば風車の修理と補強をする事になっていた。
横から、子ども達が4人分の水をタンクに汲んで、彼の後に続く。
その時、枕を担いだフィオと鉢合わせると、その足で長老に顔を見せに行こうと促された。
手持ちの荷物で全て支度を終えてしまうため、発つ前にもう一度、彼に顔を見せる約束だった。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月6日 完結
当日は 以下の3投稿です
・第十話 最終ページ
・エピローグ 1投稿
・あとがき
Instagram・本サイト活動報告にて
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インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非