(2)
フィオは、他の大人達と、荷物の積み込みで桟橋と新船を往復していた。
彼女は不意に、思い出した様に手を止める。
「いけない、枕を忘れてたわ。
子ども達にせっかく作ってもらったのに、怒られる」
高い位置で纏め上げた長髪が大きく揺れると、颯爽と船の縁から飛び下り、忘れ物を取りに急ぐ。
木材は木屑まで集め、より細かく柔らかい状態に仕上げると、織った生地に包み、クッションや枕に変えてきた。
その作業を自らの手でできるようになった子ども達は、これから航海に出る4人に、伝説の本のためにいい夢が見れるようにと、枕を贈っていた。
慌てて駆けて行くフィオを横目に、ビクターが荷車を引いて合流する。
島で採れた果実や木の実で作った保存食を、航海の途中で南の皆に渡すためのものだ。
中には苗もあり、環境が違う南や、これから見つかるかもしれない陸の土で、それらが育つかどうかを試すつもりでいる。
「後ろからだと俺を見てるみたいだ」
4人分の食材を運んできたグリフィンが、同じ背丈になったビクターを見る。
見下ろしていた頃が懐かしく、次々と大きな決断をするようになったのが嘘のようだ。
「俺はそんなおじさんじゃねぇよ」
ビクターは暫く島を離れるというのに、あっさりしており、グリフィンから食料を受け取ると、船内に姿を消してしまう。
グリフィンはそれを追う様に、中年の5年など見た目に変化は出ないと、言い返してやった。
船室から出たビクターが頭上を仰いで放つ先に、帆桁を伝って新しい帆の取り付けをするシェナが跨っていた。
「付けられるか、シェナ!
手古摺ってんな!」
「余裕。頑丈にしてるだけ。
備品が余分にあるか見て!」
怖がりはどこへ吹き飛んでしまったのか。
すっかり涙も見せなくなり、率先して、高所作業を担うようになった。
また、小振りな姿は変わらなくとも、何をするにしても力を見せるようになった。
高所作業といえばレックスが主な担当だが、その影響を受けてか、彼女の頭には、オレンジの花で染めたヘアバンドが結ばれている。
月の様に明るい髪も、首を隠すまでに伸びていた。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月6日 完結
当日は 以下の3投稿です
・第十話 最終ページ
・エピローグ 1投稿
・あとがき
Instagram・本サイト活動報告にて
投稿通知・作品画像宣伝中
インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非