表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第九話 伝説にするために
138/154

(8)




「書いてりゃ何か分かるんじゃねぇか?」



「夢はこれから何度も見るし、思い出せるかもしれないわね。きっと大丈夫よ」




ジェドとフィオは、黙ったままのシェナを無理には揺さぶらず、ページを順に並べようと、内容に目を走らせていく。

その内の1枚を、ビクターも手に取ると、髪をくしゃくしゃにしながら頭を捻り続けた。




 シェナは、彼の斜め向かいで、孤独に浮かぶ月を見上げながら、片耳だけで皆の声を聞いていた。

皆とは違い、何かをすぐには思い出せず、遥か彼方から細く射し込む月光に縋るしかなかった。




 難しい顔をする子ども達を見て、グリフィンがそっとテーブルに加わる。

レオと話している傍ら、彼等から溢れ出る興味深い言葉を、1つ1つ聞いていた。




「もっと楽しんでみろ。

そんなに不思議なものを見てるのに、もったいないぞ」




子ども達が揃って目を瞬くところを、レオは遠目で愛おしく微笑む。




「物語にするんだから、自分達を主役にして、もっと見たものと接してみるのはどうだ?」




小さな子ども達はそれに声を上げ、寝る前に聞くおとぎ話にしようと騒いだ。

しかし4人は、おとぎ話という表現に唸る。

それでは、夢で見たものが作り話という事になってしまうだろうと、首を傾げた。




「……いや。

俺達だけじゃなくて、レオとかグリフィンも、カイル達だって、似た様な夢を見てんだ。

それは事実だから、作り話なんかじゃねぇ」




これに相応しい言葉を知っている筈なのに、何故こうも抜け落ちているのか。

ジェドは少々苛立ちながら、未だ順序が分かっていないページを手早く探る。

そこへ




「ああ、ここに いちまい おちてた」




ウィルが拾い上げたそれに、4人が激しく群がる。

飛び込んだ文字に目を見開くと、同時に息が震えた。




LƎGEИD(伝説)……」




その場が、鼓動に包まれる。

時が経つほどぼやけていく夢は、散らばる様で、多くの失われているピースが見つからず、歯痒かった。

その1つに触れた様な気がし、肌が粟立つ。




 動揺する空気の中、更に飛び込んだのは、椅子が倒れる音だ。

シェナは両手をテーブルに叩きつけると、皆の顔に瞳を揺らす。

伝えなければならない事があると知った途端、喉が熱くなった。

文字にして、言葉にして、語り継がねばならない大切な事がある。




「……何か思い出したのかい、シェナ」




グリフィンの促しに、3人は顔色を変えると、シェナを振り返る。




“導きなさい……それが貴方らしい務め……私達は変わらず、貴方と……風と共に在る……”




ふと、誰かが耳を擽り、シェナは片耳に触れて辺りを見回した。

だが、炎が皆の影を揺らすだけの温かな空間以外に、何もない。




 風という言葉や、それそのものが自分の血であり肉だと、喉の温かさから感じた時、シェナは、刻み込まれているものを少しずつ話した。




「終わってないわ。まだ、行くところがある」




挿絵(By みてみん)









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月6日 完結


当日は 以下の3投稿です


・第十話 最終ページ

・エピローグ 1投稿

・あとがき


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
どうもです! 皆で夢を語り合い物語を作っていこうとする展開でしたね! ジェドも凄いですが、ビクターが幽霊を撃ち落としたと言うシーンは驚かされました!!( ; ロ)゜ ゜ まさか、幽霊を実態として捉える…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ