(7)
子ども達の話はいつだって可笑しく、これまで4人は、笑って聞き流すのが殆どだった。
だが、彼等と似た夢を自分達も確かに見た以上、じっと意識してしまう。
その夢は、手や肌に触れる様に生々しかった。
未だ、筋肉が仕事を終えたばかりの様に疼いている。
手首もだるく、まるで長い時間、何かを振り回したり、掴んでいた様な感覚があった。
そして、身体に残ったままの違和感と、夢で自分達が激しい動きをしていた事に目を見開いていく。
「槍をやたらと振り回してたんだ。
真っ暗でどこだか分かんねぇけど、相手は目が真っ赤に光ってて、小せぇくせに、でっけぇ鎌とか剣なんか持ってやがった。
殺されると思って、追っ払うのに苦労したぜ」
ジェドは、椅子の背凭れに腕を掛けたまま、宙に目を向けて思い出す。
「俺は、幽霊を銃で撃ち落としてた。
そいつ等も目が真っ赤だったな。
でも、お前が言う様な武器は持ってなくて、手ぶらだった。
幽霊なんだから、持てやしないんだろうな。
だから簡単に追い払えたのか……」
ビクターの話に、ジェドとフィオは眉を顰める。
扱った事がないものだというのに、それこそまるで夢だ。
「これに書いてある事を見て思ったの、ほら」
フィオは、薄く削った木の皮でできたページを数枚、皆の前に差し出す。
「青い森とか、綺麗な透明の岩を見たって書いてあるけど、同じ様なものを夢で見たわ。
あと、自分じゃ絶対に潜れっこない深い海の景色も見た。
そこにいる生き物は、普段見るものよりもうんと大きいの。
ケビン達が言う、光る鰭を持ってた」
4人は、文字の勉強を目的に書いていた本を綴じ直すために、内容を思い出している内に、互いを見合う。
どうやら、浜で眠っている間に見た夢と、記してきた内容が同じではないかと首を傾げた。
しかし、記憶は断片的で、昼間に覚えていた筈のものも、今では上手く表現できなくなっていた。
それらもまた、何かとても大切な事だった様な気がしてならず、皆は顔を曇らせていく。
「お前はどうなんだ、シェナ。
さっきからずっと静かだな」
ビクターは、指で転がすペンダントから音を立てながら、彼女を見つめる。
シェナは、散り散りになった夢の記憶を搔き集めようとしていたが、今は止めてしまっていた。
皆が共通の夢を見て、それが中途半端な記憶になってしまっている。
その様になってしまう理由が、他にある様な気がしていた。
だが、そう思うだけで答えは見つからず、黙っている事しかできなかった。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月6日 完結
当日は 以下の3投稿です
・第十話 最終ページ
・エピローグ 1投稿
・あとがき
Instagram・本サイト活動報告にて
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インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非