(6)
波風が冷たくとも、満月は、夜に温かい光を落としていた。
子ども達の皆は、グリフィンの家に集まり、テーブルに噛りついていた。
どんなに時間が経っても、夢中で話し込んでいる彼等に、グリフィンはやれやれと肩を竦め、白湯を口に含む。
「まるで学校だな。
いつか他の島が見つかって、子ども達がいたなら、ここで学べるな。とはいっても、通学に苦労するけど。
こんな事なら、セーリングでもしておけばよかった」
共に過ごしていたレオの発言に、グリフィンは、白湯を吹き出しかける。
子ども達が懸命にヨットを漕いでくる画が、何ともいえなかった。
「ところで、ゴーグルだと不便だろう。
いい物が作れたらいいが……」
グリフィンは、レオが子ども達から譲り受けた作業用ゴーグルを、今でも大事に着用しているところを気にかける。
「いいさ。
ガラスを焼いて試すのもまた、楽しくてね。
眼鏡職人にでもなるよ。予想外の転職だけど」
レオは、自身の未来を面白がりながら水を飲む。
「“日陰のレオ”とか言ったな。一体、何者だ?」
だがレオは、すぐには答えず、子ども達が懸命に話し込む姿を眺めていた。
そして、自分が有名であったのは、あくまでもその界隈だけだったという事を改めて認識すると、それを敢えて言わずに、小さく笑いを溢すのだった。
「……俺は、目の悪いただのおじさんさ。
まぁ、君と似たところと言えば、体育なら指導できる自信はある。無免許だけどな!」
グリフィンは目を瞬くと、レオの、指導ができるという点に食いつく。
未来を担う子ども達はスポンジそのものであり、多くの経験や知識を吸わせる絶好のチャンスなのだと熱く語った。
大人になってからでは遅いとまでは言わないが、脳の容量が圧倒的に違う事で、吸収に差が生じるのだ、と。
レオは、そんなグリフィンを、母校にいた熱血教師を重ね、笑い飛ばした。
片や、懸命に語り合う子ども達の耳には、大人の会話など一言も届いていない。
テーブルに広がるのは、昼間に見つけた書きかけの本のページの数々だ。
海水や泥に浸って使い物にならなくなったページから、乾かして綺麗にできたページもある。
だが、墨で書いてきた文字は、滲んで読めなくなっているところが幾つもあった。
そこをどの様に記していたか、また、どう記そうとしていたのかと、延々話し合っている。
そして飛び込んだのが、子ども達が浜で寝ている間に見た夢の話だった。
「あおいめだまをした りゅう に、つれていかれそうになったの。
でも とぶのが へた で、よじのぼって のっかってやったら しまに おろしてくれたわ」
「ぼく でっかい さめ を みたよ。
つき みたいに め が ひかってた。
あと ひれ も!」
「おんなじだ! おれも そいつら みた。
すんげぇ おっかねぇんだ!
そいつらじゃないか? ゴミもってきたの」
「そうなんだわ。
だってpitter-patterって、ぎょしぇんに おっことして こわそうとした。
しゃかなたち、おこってたの?」
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月6日 完結
当日は 以下の3投稿です
・第十話 最終ページ
・エピローグ 1投稿
・あとがき
Instagram・本サイト活動報告にて
投稿通知・作品画像宣伝中
インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非