(5)
人々は、まず、崩壊した家屋を簡易的に復旧し、身体の回復を優先した。
そして夜は、嘗ての大震災で失われた命や、西の島の人々、今回の災害で失われた南の親子を弔う時間を設けた。
宗派や国、その家の言い伝えの違いを話し合う中で、彼等は、ここに生きる自分達の魂を見送る方法を生み出した。
じかに自然に触れ合いながら生きるからこそ、人も自然に帰る。
違う生命に変わり、再び、新たな姿で息吹く。
その姿が、日々目にする木や植物ならば、風や海ならば、土や生物ならば、身近に感じやすかった。
何よりそれらが両親であるならば、喜び以外になにもなかった。
失われた魂を想う時、灯に気持ちを託せると信じて、数々の細い松明を波打ち際に立てた。
使うものは全て、自然に還るものにしている。
波が海に運び、煙が風に導かれ、炎が光に変わり、木が灰や墨と化して大地に返った時、生き残る魂達の想いもまた、生命力に変わる。
火や香りが消えるまで、数多の命を想い続けた。
その時間に巡るのは、涙や楽しさ、故人が好きな歌など様々だ。
音楽をほとんど知らない子ども達は、大人達が歌う真剣な歌から、少々場違いな歌に気持ちを振り回されたりもする。
小さな頃から弔いの機会を設けてきたが、この晩は、少し感覚が違った。
ずっと顔を知らなかった両親を想像できる事。
夢で見た様々な輝きが胸を包み、温かさを感じる事。
それらの幸福に紛れ込む、失われた記憶がある事への不安。
その不安を埋めたくとも追いつけないのは、まるで、天体を掴み取れないに等しかった。
小さな子ども達の集中は短く、どこか遠くを見つめる4人を振り向かせようと、小石を投げたり、ゲームがしたいと求めるのだった。
接触を繰り返す彼等は子どもだが、この生命も、巡り巡ってきたものだとするならば――
ビクターは、背中に登ってくるウィルをそのまま担ぐと、揺らす様に浜を歩いた。
ジェドは、落ち着きなく小石を投げてくるケビンを呼び寄せ、まだ教えた事のないゲームを教え、彼を鎮めてやる。
シェナは、つまらないのを我慢して膝に寝そべってくるリサの腹部をそっと叩き、時に擽って笑わせた。
フィオは、よく喋るクロイの騒ぎを和らげるべく、星座を探させる。
4人は、自然に返る魂を想像する内に、これまで以上に子ども達の存在を大事にしたくなった。
夢で出会った両親の様に、触れ合ったり、手を繋いだり、向き合って話して表現する事で、穏やかになれる。
今は、その発見に浸っていたかった。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月6日 完結
当日は 以下の3投稿です
・第十話 最終ページ
・エピローグ 1投稿
・あとがき
Instagram・本サイト活動報告にて
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インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非