(4)
グリフィンは微笑むと、指先で頭を突いた。
「ここを使い続ける。相手は自然だ」
皆は、ふと、静まり返る。何気なく発した自然という言葉に、引っ張られた。
感動するまま話し込んでいたが、再び、何かを思い出す必要がある事に気付かされると、足元の砂から辺りの景色を見回した。
「そう……自然なんだ……いつだってそこにあるのは……だから俺達は、今度こそ彼等と向き合い、訊ねながら進まないといけない」
グリフィンは言いながら、はっとする。
それは、漁師達や4人も同じだった。
何も考えずに口にした、彼等という言葉に引っかかる。
どういう訳か、その表現が見失っているものに対して随分しっくりきた。
風や海、空に、そして土に考えを持ちかけてみるという事や、向き合う事をしていた様な気がするのだ。
だがそれは、夢の中での出来事ではないかとも思う。
やけにぼんやりとしており、どの様に対話していたのかを、誰1人上手く表現できなかった。
「急ぎましょ。
仕事が山積みなんだもん。皆が待ってる」
シェナの淡々とした声を機に、皆は、東の島へ引き返していく。
古びたボートが転覆しないよう、慎重に漕ぎ進める最中、シェナはボートの舳先から進路を見つめ、心で紡いでいた。
(気を付けて。でも急いで。
早く皆に知らせなきゃいけないんだから)
「何か帰りは早ぇな。
西、ちょっと近くなったんじゃねぇの?」
ジェドが、島と島を目で往復する。
それなら尚の事都合がいいと、グリフィンは笑った。
「風が強まったせいよ。
波がさっきより大きくなって、押してくる」
フィオは海を覗きながら言った。
水面の反射光に、何故か、胸が高鳴る。
透き通った海中は鏡の様で、健全な自分の姿が輝かしいあまり、笑みを零した。
と、視界に入るガラクタに笑顔が引っ込む。
「津波でまた、ゴミが上がったんだわ……つまりまだ、深いところに沢山残ってる」
フィオは、ガラクタの雨が降り注いだ夢を思い出すと、皆にその話をした。
急に早口に語る自分に驚くと、身体がぐっと引き締まる。
笑われるだろうかと口を噤むのだが、その緊張を解す様に、グリフィンの手が肩に触れた。
「潜って集めればいい。
そうできるように鍛え上げられたんだ。
自然のためにも、やらないとな」
彼の言葉を聞きながら、ビクターはオールを止めて引き上げる。
もう、東の島は目と鼻の先だった。
「頼ってるやつにゴミを返すのは、悪い気しかしねぇしな」
ビクターのそれに、ジェドは、違いないと笑いながら、海に飛び込んだ。
「生み出したもんは、最後まで使いこなしてやる。
俺等にできる事なんて、単純だろうよ」
ジェドは言いながら、ボートの縁を掴んで押し始める。
その反対側で、フィオも海に浸かると、ボートからロープを引いた。
島の復旧作業が進んでおり、着いた皆は、慌てて仲間と合流する。
見たものや考えついた事が、渦巻く様に島に広がると、人々は、新たな可能性に胸を膨らませた。
また、いつか漁の最中に出会った新たな仲間である南の島の皆とも、手を取り合う。
互いに違った土地で生きる者同士、そこならではの物資や技術を集めて、作り上げられるものがある。
それを見つけようと、それぞれが手を動かし続けた。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月6日 完結
当日は 以下の3投稿です
・第十話 最終ページ
・エピローグ 1投稿
・あとがき
Instagram・本サイト活動報告にて
投稿通知・作品画像宣伝中
インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非