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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第九話 伝説にするために
134/154

(4)




グリフィンは微笑むと、指先で頭を(つつ)いた。




「ここを使い続ける。相手は自然だ」




皆は、ふと、静まり返る。何気なく発した自然という言葉に、引っ張られた。

感動するまま話し込んでいたが、再び、何かを思い出す必要がある事に気付かされると、足元の砂から辺りの景色を見回した。




「そう……自然なんだ……いつだってそこにあるのは……だから俺達は、今度こそ彼等と向き合い、訊ねながら進まないといけない」




グリフィンは言いながら、はっとする。

それは、漁師達や4人も同じだった。




 何も考えずに口にした、彼等という言葉に引っかかる。

どういう訳か、その表現が見失っているものに対して随分しっくりきた。

風や海、空に、そして土に考えを持ちかけてみるという事や、向き合う事をしていた様な気がするのだ。

だがそれは、夢の中での出来事ではないかとも思う。

やけにぼんやりとしており、どの様に対話していたのかを、誰1人上手く表現できなかった。




「急ぎましょ。

仕事が山積みなんだもん。皆が待ってる」




シェナの淡々とした声を機に、皆は、東の島へ引き返していく。




 古びたボートが転覆しないよう、慎重に漕ぎ進める最中、シェナはボートの舳先から進路を見つめ、心で紡いでいた。




(気を付けて。でも急いで。

早く皆に知らせなきゃいけないんだから)



「何か帰りは早ぇな。

西、ちょっと近くなったんじゃねぇの?」




ジェドが、島と島を目で往復する。

それなら尚の事都合がいいと、グリフィンは笑った。




「風が強まったせいよ。

波がさっきより大きくなって、押してくる」




フィオは海を覗きながら言った。

水面の反射光に、何故か、胸が高鳴る。

透き通った海中は鏡の様で、健全な自分の姿が輝かしいあまり、笑みを零した。

と、視界に入るガラクタに笑顔が引っ込む。




「津波でまた、ゴミが上がったんだわ……つまりまだ、深いところに沢山残ってる」




フィオは、ガラクタの雨が降り注いだ夢を思い出すと、皆にその話をした。

急に早口に語る自分に驚くと、身体がぐっと引き締まる。

笑われるだろうかと口を噤むのだが、その緊張を解す様に、グリフィンの手が肩に触れた。




「潜って集めればいい。

そうできるように鍛え上げられたんだ。

自然のためにも、やらないとな」




彼の言葉を聞きながら、ビクターはオールを止めて引き上げる。

もう、東の島は目と鼻の先だった。




「頼ってるやつにゴミを返すのは、悪い気しかしねぇしな」




ビクターのそれに、ジェドは、違いないと笑いながら、海に飛び込んだ。




「生み出したもんは、最後まで使いこなしてやる。

俺等にできる事なんて、単純だろうよ」




ジェドは言いながら、ボートの縁を掴んで押し始める。

その反対側で、フィオも海に浸かると、ボートからロープを引いた。




 島の復旧作業が進んでおり、着いた皆は、慌てて仲間と合流する。

見たものや考えついた事が、渦巻く様に島に広がると、人々は、新たな可能性に胸を膨らませた。

また、いつか漁の最中に出会った新たな仲間である南の島の皆とも、手を取り合う。

互いに違った土地で生きる者同士、そこならではの物資や技術を集めて、作り上げられるものがある。

それを見つけようと、それぞれが手を動かし続けた。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月6日 完結


当日は 以下の3投稿です


・第十話 最終ページ

・エピローグ 1投稿

・あとがき


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
どうもです! 新しい新地を目指し、生活を取り戻そうとするシェナたちが、どれだけ、力強いのか感じさせられました! あれだけの死闘を終えたばかりなのに、根性や気合いが自分とは全然違っていて、思わず脱帽しま…
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