(3)
少しばかり離れ、騒ぎを眺めていたシェナは、喉に触れた。
目まで這い進んだ細い金の光に、はっとし、導かれる様に海や空を見回す。
雲を流し、波を立てる風は、自身の心をそのまま映す様に穏やかだった。
そのまま、何もない西の島と思しき陸地を見た。
信じられない現象に目を凝らすと、周囲の植物の音と香りとは別に、新たな緑の香りを感じた。
仄かなそれを味わう様に吸い込んでは、再び空を仰ぐ。
と、自分が受け持つ大きなものを噛み締める様に、見えない何かに頷いた。
島の復旧を仲間に任せ、2隻のボートを出した。
4人は困惑するグリフィンに付き添い、漁師達と共に、現れた新地を目指す。
ある程度まで近づくと、グリフィンは一番に飛び込み、浅瀬を駆ける。
東の島ほどではないちっぽけなここは、住んでいた人数もそう多くはなかった。
一握りの集団で懸命に生き延びようとした事が、鮮明に思い出される。
家屋も何もないが、草木の芽が顔を出す地面に、両手をついた。
温かいそこは、確かに息吹いており、砂が軽やかに舞う。
4人は、島の真ん中で小さくなるグリフィンに歩み寄ろうとする。
だが、聞こえてくる微かな洟をすする音に暫し足を止めた。
そして、同じ様にしゃがんで地面に触れた時、やっと、ビクターの方から彼に触れた。
「陸が戻ってきてるのか?」
ビクターの声に合わさる様に、頭上で海鳥の群が鳴き声の尾を引いた。
ジェドは、遠ざかるそれらを眺めていると、再び不安に目が震える。
自分達は、もっと何かに気付かねばならないのかもしれないと。
「陸は昔に沈んじまったんだろう?
それが戻ってるとすれば、鳥が向かう先にもしかすると……」
ジェドの言葉に、フィオが目を見張ると、海を見渡した。
陸を見つけられれば可能性が広がる。
それが何なのかを、人々の知恵を借りて編み出したかった。
ここをもう一度、多くの生命が宿る場所にするために。
「ここに何か作れるんじゃない?
おじさん達が試そうとしていた事とか」
フィオのふとした提案に、カイルが、ならばと、マージェスや後の漁師達を揺さぶる。
「ほら言ってたろう、風車試そうぜ。
場所にはもってこいだ」
「マジ!? 風力発電が叶うってか!?
ついでに太陽光パネルもやろうぜ!」
「南の瓦礫を漁れば、材料があるかもしれない。
修理は得意そうだな、レックス」
グレンがやる気に満ちていく横で、マージェスは真顔のまま、辺りに細かく目を這わせて頷く。
そこへ、漸くグリフィンが立ち上がると、マージェスの手を固く握った。
感動する大人達においてけぼりになる4人に、グリフィンは涙目を拭って笑いかける。
「再生可能エネルギー(リニューアブルエナジー)だ。
風や水や、太陽の力を借りる。
今よりも、もっと」
「え?何だって?」
またよく分からない長ったるい名前だと、ビクターは眉を寄せる。
自然の力を借りる事は珍しくない。
それが、これまでよりも活用できるならば、助かる事も増えるだろう。
その中身がどういったものなのか、4人は興味深かった。
「だが、天気に左右されるってのが難点だ」
マージェスが懸念すると、シェナが表情を曇らせる。
「どうすればいいの……?」
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月6日 完結
当日は 以下の3投稿です
・第十話 最終ページ
・エピローグ 1投稿
・あとがき
Instagram・本サイト活動報告にて
投稿通知・作品画像宣伝中
インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非