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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第九話 伝説にするために
133/154

(3)




 少しばかり離れ、騒ぎを眺めていたシェナは、喉に触れた。

目まで這い進んだ細い金の光に、はっとし、導かれる様に海や空を見回す。




 雲を流し、波を立てる風は、自身の心をそのまま映す様に穏やかだった。

そのまま、何もない西の島と思しき陸地を見た。

信じられない現象に目を凝らすと、周囲の植物の音と香りとは別に、新たな緑の香りを感じた。

仄かなそれを味わう様に吸い込んでは、再び空を仰ぐ。

と、自分が受け持つ大きなものを噛み締める様に、見えない何かに頷いた。




 島の復旧を仲間に任せ、2隻のボートを出した。

4人は困惑するグリフィンに付き添い、漁師達と共に、現れた新地(さらち)を目指す。






 ある程度まで近づくと、グリフィンは一番に飛び込み、浅瀬を駆ける。

東の島ほどではないちっぽけなここは、住んでいた人数もそう多くはなかった。

一握りの集団で懸命に生き延びようとした事が、鮮明に思い出される。




 家屋も何もないが、草木の芽が顔を出す地面に、両手をついた。

温かいそこは、確かに息吹いており、砂が軽やかに舞う。




 4人は、島の真ん中で小さくなるグリフィンに歩み寄ろうとする。

だが、聞こえてくる微かな洟をすする音に暫し足を止めた。

そして、同じ様にしゃがんで地面に触れた時、やっと、ビクターの方から彼に触れた。




「陸が戻ってきてるのか?」




ビクターの声に合わさる様に、頭上で海鳥の群が鳴き声の尾を引いた。

ジェドは、遠ざかるそれらを眺めていると、再び不安に目が震える。

自分達は、もっと何かに気付かねばならないのかもしれないと。




「陸は昔に沈んじまったんだろう?

それが戻ってるとすれば、鳥が向かう先にもしかすると……」




ジェドの言葉に、フィオが目を見張ると、海を見渡した。

陸を見つけられれば可能性が広がる。

それが何なのかを、人々の知恵を借りて編み出したかった。

ここをもう一度、多くの生命が宿る場所にするために。




「ここに何か作れるんじゃない?

おじさん達が試そうとしていた事とか」




フィオのふとした提案に、カイルが、ならばと、マージェスや後の漁師達を揺さぶる。




「ほら言ってたろう、風車試そうぜ。

場所にはもってこいだ」



「マジ!? 風力発電が叶うってか!?

ついでに太陽光パネルもやろうぜ!」



「南の瓦礫を漁れば、材料があるかもしれない。

修理は得意そうだな、レックス」




グレンがやる気に満ちていく横で、マージェスは真顔のまま、辺りに細かく目を這わせて頷く。

そこへ、(ようや)くグリフィンが立ち上がると、マージェスの手を固く握った。




 感動する大人達においてけぼりになる4人に、グリフィンは涙目を拭って笑いかける。




「再生可能エネルギー(リニューアブルエナジー)だ。

風や水や、太陽の力を借りる。

今よりも、もっと」



「え?何だって?」




またよく分からない長ったるい名前だと、ビクターは眉を寄せる。




 自然の力を借りる事は珍しくない。

それが、これまでよりも活用できるならば、助かる事も増えるだろう。

その中身がどういったものなのか、4人は興味深かった。




「だが、天気に左右されるってのが難点だ」




マージェスが懸念すると、シェナが表情を曇らせる。




「どうすればいいの……?」









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月6日 完結


当日は 以下の3投稿です


・第十話 最終ページ

・エピローグ 1投稿

・あとがき


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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