(10)
「今の私は、海も陸も行ける。
だから、皆の傍から離れたりしない」
フィオの温もりを噛み締めながら、シャンディアは口元を綻ばせた。
皆のためになる答えを探したフィオの気持ちに、胸が震えた。
「随分なキッカケだったが、また会えたんだリヴィア。
何かあったらいつでも来いよ。
言ったろ、俺達はもう仲間なんだ」
絆を強調するビクターの言葉に、リヴィアは僅かに口角を上げると、青い眼を閉ざし、ただ小さく頷く。
震える瞼を開く訳にはいかず、相槌を打つのに精一杯だった。
「あーでも、待て。
見ろよ、随分散らかっちまった。
片付けるの手伝ってくれるだろ?」
ジェドは、目の前の2人や後の神々を見ながら言う。
家もすっかり崩壊してしまったのだからと、彼等の力を求めた。
リヴィアは、銀に輝く長髪に顔を隠してしまう。
それを覗うシャンディアは、眼が震えていた。
しかし、リヴィアよりも前に出ると4人の手を取り、更に、彼等の後ろに並ぶ共に戦った人々を見つめる。
「世界は救われました……あなた方の力が大きく働いた事で、未来が拓かれた……大地は返ります……そしてまた、世界は始まる……」
彼女の言葉に、人々は首を傾げる。
大きな戦いが終わった今、またこれまでの生活が始まるだろう。
だが、地球の大半は大海原と化している。
予定していた別の大陸を探す事にはなるだろうが、それも必ずあるとは限らない。
シャンディアの視界は、映し出される更なる先の未来から、人々の今の様子に戻っていく。
大地が返るという意味に首を傾げる彼等だが、それに大きく頷くと、微笑んで見せた。
そして彼女は、再び4人の目を順に見つめる。
勇ましい顔に滲む愛情や友情を感じるほど、握る手が強まり、突き上げてくるものを一筋の銀の涙に変えた。
「貴方達は沢山のものを見た……そしてその身に刻まれた……信じて、これからも進んで……どうか世界を……人を導いて……」
4人は顔を見合わせると、酷く悲しむシャンディアの顔や肩、腕に触れ、抱き締めた。
「どこへでも行けるって言ったじゃない。
また会いましょ。ねぇ、もう大丈夫だから!」
フィオに賛同する様に、ジェドとビクターがシャンディアの肩を叩いて励ました。
だがシェナは、先ほどからずっとシャンディアの横顔や、後の神々を気にしている。
「何だよ、リヴィアまで。
いっそ、泣いちまえよ!」
ジェドがリヴィアの腕を引いた次の瞬間、彼女は、4人を丸ごと抱き寄せ、咽び泣いた。
4人は、あまりに唐突で、想像以上の涙を溢す彼女に言葉を失う。
その背中に、シェナがそっと手を回した。
丸くなる背中の向こうに佇む神々を、シェナは瞬きもせずに見つめ返す。
彼等の姿に違和感しかなかった。
その奇妙さに不安を覚えると、金の光が、熱くなる喉から身体の四方へ細く流れた。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
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インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非