(7)
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「棘を宿すものじゃないぞ、シャン……」
「だが、さっきの発言は毒針に打たれたようなものだ。無理もないだろ」
オルガは髪飾りに触れると、昏い視線を封印の蓋に向ける。
2人は大地の神を地中に沈める事で、その暴走を止めていた。
「だが、根本の解決は最早、我等の力だけでは不可能だ……」
シャンは、オルガの言葉が信じられなかった。
封じた事で弱っている大地の神が、封印を蹴破る未来など。
例え先代が、それを見通しているとしても。
「聞け、シャン……これは訪れてしまう真……あらゆる術を持ってしまった大地は、いずれ、空にも手を伸ばす……」
シャンは目を見張り、鋭い眼光を向けた。
空など太刀打ちできない。
そこまで分かっていながら一族で止められない事に歯を鳴らし、焦燥を隠しきれなかった。
「募る闇の払拭は時がかかる……大地は我々と同じ神であれ、最も人間と共に在った……よって、人間の様なものだ……コア……その者が伸ばす根は、地球の血の道であり、心、身体そのもの……大き過ぎるそれを相手にする事は、即ち、我等だけでは届かん……」
シャンは封印の前を行き来し続ける。
魔力で止め切れないという事実に絶望する上、早くも自らが筆頭を務める事に、懸念しかなかった。
「苦労をかける……だが、これは抗えん……鎮めるためには、それなりの責務を全うするまで……その先に光る未来があるのもまた、真だ……」
大きく振り向いたシャンに、オルガは微笑を浮かべる。
そして、外した髪飾りに寂し気に触れながら、瞳を明るく灯し始めた。
「傷は痕を残すが、それは語り継がれ、未来の予防線になろう……私が見るものが、お前にも見えるとよいが……」
先代の眼力には誰も及ばず、遠過ぎる先の未来など、シャンには分からなかった。
また見えたとしても、今の様に首を振るばかりで落ち着かない。
僅か先の未来しか分からない自分にもまた、腹立たしかった。
「お前が頑なであるのもまた、深い愛故のものだ……信じておる、シャン……世の生命を託した……」
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先代オルガの最後を、忘れた事はない。
その後、人の子を産んで消えた彼女の姿を見る術などなく、彼女の飾りが独りでに一族に戻った事で、この世を去った事が証明された。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
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その他作品も含め
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