(6)
島は、4人や漁船の仲間達を迎える声で賑わっていく。
4人は飛び下りると、人々の温かさに包まれていった。
幼少期に戻った様だった。
気付けばすっかり、島の皆は両親だった。
他人の集まりだと意識し過ぎた事で孤独に歩き回る事もしてきたが、それが信じられないくらい、今は、目の前で手を広げてくれる皆の元に帰りたいと思える。
それほどに皆を愛していると、実感させられた。
待ち構えていた子ども達やアリーに抱き締められ、それを覆う様にレオや他の仲間達が寄り合った。
皆は負傷している事も余所に、互いを抱き締め合って暫く離れようとしない。
下船したマージェスを見たジェドは、真っ先に飛びかかった。
マージェスは怪訝な顔をして彼を引き離そうとするのだが、重くて力が強くなった彼に、そのまま倒されてしまう。
ジェドは悪戯心を含んだ楽し気な笑い声を上げてはいるものの、顔を上げられなかった。
マージェスは、縋りついてくる幼さを滲ませる彼を、抱き締め返す。
本当は小さく震えるのを堪えるのに必死になっている。
そんな、未だちっぽけな身体を支える様に包んだ。
何も言わずにジェドを受け入れ、放そうとしないマージェスの顔もまた崩れていく。
ライリーはそれを、傍で静かに見守った。
そこへ、漸く歩行が叶った長老の気配がした4人は、途端に飛びかかる。
小さくて身軽な長老を、ビクターはあっさりと持ち上げてしまった。
止めないかと素っ頓狂な声を上げる長老に、シェナが腹を抱えて笑うと、温かい微風が木々の音を立て、周囲に立つ神々の光をも美しく舞い散らせた。
海面から顔を出していたシャンは、重い眼差しで人々を眺めていた。
と、足元から不意に鮫の背中が浮上し、彼を乗せて指示を待つ。
シャンは鏡の背鰭を掴むと、その横についたシャンディアや他のミラー族も、宙のリヴィアと同じ眼差しで島の様子を見つめていた。
シャンは、人々の愛情と接触に取り巻かれるフィオから眼を離さない。
人間に囲まれ、温もりを得ているフィオの肌は、元よりも白くなり、髪は白銀の光の筋を走らせている。
その変わり様が、先代と重なる。
無茶な事をするところや、気が強いところ。
そして仲間を想い続け、言葉を大切にするところは、子を置いていく決断ができてしまう両親が持ち合わせていたものだろう。
先代が世に遺したかった姿形そのものであると示す様に、4人やその仲間達が触れ合い、包まれていく。
その光景が、体中に沁み渡っていく。
その時、ふと、浴びせられてきた言葉が蘇った。
長老の言葉や、陽炎の少年の言葉、何より従者シャンディアの強い訴えに、顔が俯く。
シャンディアの視線を感じたものの、敢えて振り向かず、先代との過去に耽った。
………
……
…
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
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インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非