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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第八話 愛を育み続けられるように
123/154

(5)




 シェナは、ふと、重い身体を起こした。

それにグリフィンが振り返ると、リヴィアが傍に追いついた。

彼女の淡い眼光は、どこか寂しく、冷たくも見える。

再会が随分なキッカケではあったが、天と地の合流がなければこの時間は訪れなかっただろうと、互いに目だけで語る。




「ずっと見てたのか……?」




グリフィンの問いかけに、リヴィアは顔を背けるだけで何も答えない。

その、遠くを眺める眼は、間もなく辿り着く島よりも遥か先を見て、眼光の明滅を繰り返している。

戦いで負った傷はまだ、癒しきれていない。

それらの痛みや肉体的疲労よりも、もっと別の事に重きを置いているという事を、曇る表情に浮かぶ貫く様な眼差しが表していた。




「今度は少し長くいられないか?

分かってるだろう。

特に子ども達は、君達の様な存在を知りたがってる」



「もう十分だろう……」




リヴィアは声を低く、顔も向けないまま返した。

その様子が何を意味するのかを考えるグリフィンの横で、シェナは、リヴィアを不安に見つめる事しかできなかった。




「貴方達はもう、知った……知り過ぎた……そして我々は、縋り過ぎた……惨い事をしたものだっ……」




消えかかる言い終わりは、力んでいた。

ぼやけた美しい声は、見えはしないが、濡れている様だった。




「そうだな、酷いものだよ……だが、そうさせたのは何かを考えると、君達を責められない……」




リヴィアは1つ瞬くと、漸く、寂し気に眼を向ける。




 グリフィンの鼓動が速まっていく。

寂しいという単なる1つの感情だけではない。

多くの何かが入り混じる様な、読み取れない表情に困惑してしまう。

睨みつけられている様で、魔力を含む視線にすっかり拘束されていた。

その含みある眼差しにシェナも恐れ、グリフィンの腕を握る。




 リヴィアは再び前を向くと、近付く島を見た後、改めて振り返る。




「それでいい……私達は今、救われた……互いに次の務めがある……貴方達にとってのそれが何かは、言わずとも分かっているだろう……」




寂し気な瞳をそのままに、リヴィアは柔らかな声で告げた。

心地よさをくれるそれは、今にも眠ってしまいそうだった。




「定めと向き合わねばならない……よって、犠牲はどうしたってつきものだ……だが、惨い事は嫌いだ……嫌いなんだ……だから優しく、心地よいものがいい……そうするべきだ……」



「……犠牲? どうしてそんな話になる。

リヴィア、君は一体何を言っているんだ」




既に、彼女は颯爽と海面まで下りてしまう。

2人が慌てて見下ろした先には、東の島が真下にあった。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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