(5)
シェナは、ふと、重い身体を起こした。
それにグリフィンが振り返ると、リヴィアが傍に追いついた。
彼女の淡い眼光は、どこか寂しく、冷たくも見える。
再会が随分なキッカケではあったが、天と地の合流がなければこの時間は訪れなかっただろうと、互いに目だけで語る。
「ずっと見てたのか……?」
グリフィンの問いかけに、リヴィアは顔を背けるだけで何も答えない。
その、遠くを眺める眼は、間もなく辿り着く島よりも遥か先を見て、眼光の明滅を繰り返している。
戦いで負った傷はまだ、癒しきれていない。
それらの痛みや肉体的疲労よりも、もっと別の事に重きを置いているという事を、曇る表情に浮かぶ貫く様な眼差しが表していた。
「今度は少し長くいられないか?
分かってるだろう。
特に子ども達は、君達の様な存在を知りたがってる」
「もう十分だろう……」
リヴィアは声を低く、顔も向けないまま返した。
その様子が何を意味するのかを考えるグリフィンの横で、シェナは、リヴィアを不安に見つめる事しかできなかった。
「貴方達はもう、知った……知り過ぎた……そして我々は、縋り過ぎた……惨い事をしたものだっ……」
消えかかる言い終わりは、力んでいた。
ぼやけた美しい声は、見えはしないが、濡れている様だった。
「そうだな、酷いものだよ……だが、そうさせたのは何かを考えると、君達を責められない……」
リヴィアは1つ瞬くと、漸く、寂し気に眼を向ける。
グリフィンの鼓動が速まっていく。
寂しいという単なる1つの感情だけではない。
多くの何かが入り混じる様な、読み取れない表情に困惑してしまう。
睨みつけられている様で、魔力を含む視線にすっかり拘束されていた。
その含みある眼差しにシェナも恐れ、グリフィンの腕を握る。
リヴィアは再び前を向くと、近付く島を見た後、改めて振り返る。
「それでいい……私達は今、救われた……互いに次の務めがある……貴方達にとってのそれが何かは、言わずとも分かっているだろう……」
寂し気な瞳をそのままに、リヴィアは柔らかな声で告げた。
心地よさをくれるそれは、今にも眠ってしまいそうだった。
「定めと向き合わねばならない……よって、犠牲はどうしたってつきものだ……だが、惨い事は嫌いだ……嫌いなんだ……だから優しく、心地よいものがいい……そうするべきだ……」
「……犠牲? どうしてそんな話になる。
リヴィア、君は一体何を言っているんだ」
既に、彼女は颯爽と海面まで下りてしまう。
2人が慌てて見下ろした先には、東の島が真下にあった。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
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その他作品も含め
気が向きましたら是非