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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第八話 愛を育み続けられるように
121/154

(3)




 まるで激動の時を知らぬ様に朝陽は昇り、空を一層、鮮やかに変えていく。

だが、4人は、ぼんやりと遠くを見つめ、その世界に溶け込んでいた。




 フィオとジェドは、共に(サメ)に運ばれているが、互いの視線はすっかり別の方を向いている。






 ジェドは身体が重く、緩やかにだが、肩で息をしていた。

全身が熱く、風邪の様な症状を感じている。

事が治まり、疲労の波が一気に押し寄せていた。

変化を繰り返していた身体を見回すと、元に戻っている。

それは良くとも、頭痛が酷く、そのせいなのか、これまでしてきた事の記憶が断片的になっていた。




 足元の鮫の声も聞こえない。

いつの間にか気に入っていた力を出せなくなるほどに、自分は動いていたという事なのだろうか。

そう思う内に寂しさが増し、溜め息を零しては、当てもなく宙を見上げた。




 呪われた身体を、これからどの様にコントロールすればよいのだろう。

焼きついているのは、コアに見せられた世界の父が、自分よりも獣の様だった事だ。

果たして自分は、この先その様になってしまうのだろうか。

人を襲ってしまう様な生物に変わり果ててしまうのだろうか。

共に生きてきた仲間を大切にするためには、どうすればよいのか。

と、またいつもみたく、独りで物思いに耽っていく。






 フィオは、そんなジェドの様子を気にかける気力もなく、彼の背中にどっしりと身を預けていた。

彼の熱い体温を感じながら目を閉じると、瞼が痙攣するのを感じる。

戦いが終わったと同時に、安堵と寂寥の波が押し寄せ、涙に変わろうとしていた。




 母の声が聞こえない。

その姿も、飾りもない。

大きな道標になってくれた代わりに与えられた膨大な虚無感に、眉を寄せる。

いつしか、両親がいない事に涙を殆ど流さなくなった。

心細さは拭えなくとも、それを埋めてくれる人達や出来事に救われてきた。

だが今は、まるで幼少期に戻った様な気分だ。




 薄目を開くと、自身の肌に走る白銀の細い筋や細かな輝きが見える。

以前の身体ではなくなってしまっている事を改めて実感させられ、ミラー族の影が見える水面を、ぼんやりと眺めた。

母は、自分を人だと言うが、果たしてそうだろうか。

この身体はまだ、ミラー族のままではないかと、突き上げてくるものに歪められていく顔を伏せた。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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