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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第八話 愛を育み続けられるように
120/154

(2)




 (サメ)(シャチ)に、守護神の竜が、4人を待ち構えていた。

彼等と共に浮上したライリーは、レックスに引き上げられる。

そのすぐ傍には漁船が着いており、そこから1人の手が伸びた。




 船体の扉から梯子を出し、2人を引き上げようとするマージェスを見たライリーは、漸く我に返る。

彼の傷だらけの顔は、引っ叩いた時とは比較にならないほどに勇ましかった。

早くしろと催促する声に、ライリーは素直に引き上げられていく。






 漁船内は、降り注いだガラクタが積もり、そこら中が破壊されている。

浮かんでいるのが不思議なくらいだと、レックスは目を見張った。

仲間達は、そんな彼の足が完治していると分かると、その場は忽ち喜びの声で満たされていく。




「ああ、やっと事態が落ち着いたってのに、パーっとやれねぇんだな」




グレンが酒の恋しさを零すと、マージェスがライリーを大きく振り返る。

彼の急な動作に、彼女は流し目を向ける。




「お前さんが持ってる酒は駄目なのか?」



「駄目」




ライリーはきっぱり撥ね退けると、髪をかき上げ、服を絞る。

南には蒸留ができるものは残っていないのかと、あれこれ訊ねる声が後を絶たないが、どれも返答せずに聞き流した。




「あんただって飲みてぇもんの1つや2つ、あるだろうよ」




しつこいマージェスに、ライリーは髪のすだれ越しに呟いた。




「コーヒーがない……」



「コーヒー酒とは洒落てんのな、医者は!

何てやつ?」




気さくなレックスが訊ねる横から、お前がカクテルなど知っているのかと、カイルの揶揄う声が被さる。

それはどういう意味だと怪訝な顔をするレックスだが、2人の子どもの様な戯れは、その場を和ませるものがあった。




 ライリーはそんな皆に背を向けたまま、服から水を切り続ける。

洒落ている訳ではないと言い返してもよかったが、随分喋り過ぎている様な気がした。

自分はそんな人間ではないのだと、また殻に閉じこもろうとしてしまう。

だが、どうも南にいた時と比べて感覚が違った。

彼等と会話をする事に、胸が擽られている。

手が(おもむろ)に胸に伸びると、視線が大海原に向いた。

朝陽を受けて揺れる水面が、何とも美しい。

そう素直に思えた感覚こそ、懐かしく思えた。




「ホワイト……ルシアン……」




最後に覚えたその名を、僅かに呟く。

いつかまた口にできるその日を、密かに祈りながら。




挿絵(By みてみん)









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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