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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第一話 東の島の出来事
12/154

(10)




「わたしは?」



「花だ」




フィオに即答したレックスに、周囲の大人達が驚く。

彼の口から花という言葉が出る事こそが珍しい。

何だか、どこかむず痒いくらいだ。




「おい失礼だな! ……柔軟剤とかでも書いてあったろう! 知らねぇのか?」




照れ隠しのつもりか。

早口で説明するレックスだが、家の手伝いなんてしていたのかと結局は揶揄われる。

やんちゃな印象を持たれるのは仕方がない部分もあった。

だが彼は、溜め息を吐くと水が入った木のカップを置き、どこか寂し気に答えた。




「すぐにピンときた……おふくろが花屋だったんだよ……嫌でもちっとは知恵がつく」




珍しい花や小さな花などと意味されるフィオという言葉は、亡くなった父親の腕に彼女が抱かれていた際に、メモ書きとして遺されていた。

そしてこの件から、誰しもが不思議に思うのだ。

フィオの母親の存在が何故分からないのか、と。

独り身だった筈のフィオの父親が誰かと出会うならば、東の島であるここか、近くの西の島以外に有り得なかった。




「花を知ってるだろう、フィオ」




シェナと共に寝床で丸まって座るフィオは、レックスに頷く。




「両親はきっとそれが好きで、見ていてホッとしたんだろうさ。お前がよく言う、大丈夫って思えるくらいに……多分だぞ?」




良い事を言うものだと言わんばかりに、グレンが肘でレックスの腕を突いた。




 ビクターは、声もなく満面の笑みを浮かべるフィオを見つめる。

その明るさや、よく動いて元気なところを時々見ていた。

それに、ジェドと共に筏を守ろうとしてくれた力持ちなところもある。

大した女の子だと、静かに感じていた。




 さてここまでだろうと、ビクターは同じ様な話は自分にはないと見切って立ち上がる。

その時、ポケットから何かが零れ落ち、細かい音が床に響き渡った。




 それを見て先に慌てた声を上げたジェドだが、それに追いつく様にビクターが咄嗟に拾ってポケットに隠す。




「なんでもない! なんでもないの!」




焦りに目を丸くさせたフィオがシェナの隣から飛び降り、転んでしまった。

その拍子に、ポケットから釘やゴム製の輪が一気に飛び出した。




「バカっ!」




ビクターが堪らず放つと、3人の上に大きな影が被さった。




「何でこんなもん持ってるんだ?」




勝手に漁船の倉庫に忍び込んだとハッキリ言えるのかどうか、カイルはビクターをじっと見下ろした。

ビクターは目を見開くのだが、徐々に表情を険しくさせる。

この際だ、独りで生きていくんだと言い放ってやる。

互いに知らない者同士だ。

どこでどの様に生きていこうが勝手だろうと、口を開いた途端――




「こいつは! あ……ビクターはすげぇんだっ!

おっちゃんたちと、おんなじだっ!」




割り込んだジェドに続いて、フィオが隠し持っていた小さなドライバーやレンチを取り出した。




「これ かしてっ! すっごいふね つくってるの!

なわも じょうずよ!

できたら、さかな とってくるから」









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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