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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第八話 愛を育み続けられるように
119/154

(1)




挿絵(By みてみん)




 朝焼けが静けさをもたらし、長い慟哭(どうこく)が続く夜の終わりを告げていく。

魔力による光を失った荒海が素顔を取り戻し、冷たい微風が心地よい波の音を立て始めた。




 島では、多くの木々が薙ぎ倒され、高台の殆どが崩れ落ちている。

体感した事のない風速に、人々は反対側の海まで飛ばされていた。

その救助に竜の使者が向かい、激戦区の精霊達やミラー族も合流している。




 何事もなかったかの様に静まり返った景色に、誰もが恐怖していた。

しかしそれも、やっと顔を見せた朝陽によって、拭われていく。

眩しいこれに、心の底から嬉しくなり、目を背ける者はいなかった。




 人々は島に導かれていくと、沖から戻る仲間を迎え入れようと、波打ち際へ駆けていく。






 だがレオは、これに全力で喜べず、影で独り、安堵の息を吐いていた。

人々の喜びや、仲間の無事に感極まる声に、じっと耳を傾ける。

これが、彼の当たり前の生き方だった。




「はずかしいの?」




急に飛び込んだリサの声に、レオの肩が飛び上がる。

小さな彼女の後ろには、同じく小さな仲間達が、彼を見上げて不思議そうな顔をしていた。




「これ、おちたよ。われてるじゃないか。

それで、げんきがないの?」




ウィルは、すっかりレンズを失ったレオのサングラスを拾うと、首を傾げた。




「おれの これ、かしてやる。

こまることでも あるんだろ?」




ケビンが不意に突き出したのは、漁船倉庫から持ち出したゴーグルだ。

僅かに薄暗いレンズをしたそれは、少しなら助けになるだろう。




「気が利くんだな。すまない、助かるよ」



「なんだか め が ちょっと しろいのね。

ちゃいろだけど、ここが」




クロイはレオの目を指差すと、瞳のもっと真ん中の方だと言いながら、友達にそれを教えた。

目が悪いのだと彼等なりに解釈すると、レオの手を引いてミラー族に頼もうと騒ぎ始める。

レックスの足を治したところを見て、レオの目も治るのではないかと興奮していた。




 だが彼は、微笑ましい提案に優しく首を横に振ると、借りたゴーグルを装着し、彼等と目を合わせる。




「駄目だよ。

俺はこの目だからこそ勝ち抜いてきたんだから。

奪われちゃ困る。

今じゃ、もう1人の相棒なんだ」



「その め が?」




子ども達は声を揃えて顔を見合わせると、コロコロと笑い声を上げた。

腹を抱える彼等が愛おしくてならず、レオもまた、笑い声を溢す。

そして立ち上がろうとすると、ケビンが彼の背中に攀じ登り、目の上に手を翳した。




「じゃあ、まもってやるよ。

くらいほうが いいんだろ?

こうしてりゃ、ずっと て を あげてなくても すむ」




レオは、寛大な彼等に僅かに瞳を震わせると、そのまま小さな手に引かれて、海の戦士達を迎えに行った。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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