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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第七話 同じ自然として 同じ魂として
118/154

(19)



※1540字でお送りします。







 フィオは、両親の柔らかな表情と、温かい腕に包まれると、口が自然と綻んでいく。

髪を撫でられている感触が、確かにあった。頬に2人の唇が触れ、笑い声が聞こえてくる。




“もう大丈夫”




2人は言うと、再び抱き締めてくれた。

いつまでも離さないと、強く、解けないように。






 ジェドは、最後に見た父とは違う、爽やかで、健全な表情をした彼と再会していた。

そして、更なる事態に目を震わせる。

誰かが肩に腕を回すもので、そちらを振り向いた。

微かな鼻歌が聞こえ、それにもはっとさせられる。

たった今、初めて耳にする筈のそれが、途轍もなく懐かしく感じた。

すると、同じ色をした長い髪の女性が、身体を包んできた。




“生きてる……やっと会えた……”




そのまま両親に抱かれる内に、胸が締めつけられていく。

囁かれる愛に、じかに伝わる温もりに、ずっと浸っていたかった。






 シェナは、互いに汚れ、身体に事情を抱え、枷を付けた同士と向き合っていた。

痛みの上で、尚も笑い、働き、勇気をくれた戦友達が、輪を作る様に肩を組む。




“どこかできっと、幸せになる。なってみせるんだ”




明日、或いはこの後、その身に何が起こるか分からない世界で、互いに願った。

最悪な人生の始まりの先で得た、最高の仲間の命の光に、胸が燃えた。






 ビクターは、どこかからのペンダントの音に顔を上げる。

と、これまでも耳にしてきた優しい声が、形になり始めた。

陽炎もいなければ、身体を埋める瓦礫もない。

そこに立つ2人は綺麗で、勇ましかった。




“上手く決まった”




両親が肩を抱き寄せ、微笑んだ途端、緊張が一気に解れていった。






 それぞれが欲しいと願っていた大きなものは、蔦に柔らかく包まれ、消えてしまう。

この先も、胸にずっとあり続ける。

そう肉体に刻む様に、巻きつける様に、彼等を支える様に、太い根を張り巡らせながら、淡い緑の光に溶かされていった。






 ライリーは、身動きできずに困惑していると、胸の痛みを感じた。

埋もれるものを掘り起こされる感覚に、顔を歪める。

相手の術によるものだろうと、大人しく堪え続けた。

だが、息が尽きてしまう前にと、伸ばしていた両腕に力を加え、指先をどうにか動かす。

そこへ、胸の不快感が急に止んだ。

彼女は楽になった途端、その者に、聞けと心で懸命に語りかける。




(どんなに赦されなくても、私や、仲間は、貴方を憎んだりしない。

もう、傷つけるのは終わり。

ここからは、救い合うのよ)




 募る感情を晴らす機会を見失い続け、とうとうここまできてしまったのだろう。

何もかもを取り込めば、重くなり、燻み、黒く染まってしまう。

そうして光が閉ざされていく。

見えていたものが失われ、その怖さに怯え、壊す筈ではなかったものを壊し、困惑の渦に落ちる。

そして己をも見失う。

そんな自分自身にもまた腹を立て、蝕んでいったのだろう。

閉鎖的な空間に淀んだままの空気に侵され、そして、殺意は生まれてしまった。




(変われるという事を、貴方から教わった……感謝してる……感謝してるの……)




 ライリーの力が抜けた。

涙が海に拭われるのに合わせて、木の根が伸びてくる。

巻き込まれるのかと恐れたが、違った。

その者は、根を人間の左手に変えると、彼女の手を優しく握った。




 ライリーは目を見張る。

鼓動が全身を打ち鳴らし、大粒の涙が海に美しく浮かんだ。




「……ありがとう」




ぼやけた囁きに、はっとしたのも束の間――もう、その手はどこにもなかった。






 身体の拘束が解かれた途端、4人は遠ざかり始める形ある者を、必死に求めてしまう。

行かないでほしい。

そんな強い願いを乗せた手をどんなに伸ばしても、根と蔓が厚く阻み続けた。

その嵩張りは、次第に球体に変わると、寸秒、地球の影を見せる。

と、蟲達が覆い尽くしていく。

集まる緑の光で、皆の視界を遮った時、コアは、深海の闇へ消え去った。




挿絵(By みてみん)









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
どうもです♪ まさか、コアがあんな最後を向かえるとは思いませんでした! 内部からの炸裂とは(^-^; シェナとグリフィンがコアの体内に入った時はどうなるのやらと、ヒヤヒヤしてました! シェナはこれから…
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