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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第七話 同じ自然として 同じ魂として
117/154

(18)



※1360字でお送りします。







 飛散する破片に紛れて落ちていく者を、ライリーは見逃さなかった。

激しい風圧に転覆したジェットスキーだが、尚も目標に向かって、レックスと走り続けた。




 その横へ、漁船が爆風に押し流されてきたが、駆けつけたミラー族が鏡の波の壁で()き止めた。

漁船の皆は、通過していく2人に声を張るのだが、彼等は振り向きもしない。




 (ようや)く、聳え立つ悪魔が消えたのも束の間、皆は空の異変に呆気に取られる。

粉砕したコアの欠片が収集されると、表面を徐々に広げ始めていた。

そこに映し出されていくのは、コア自身が身体に取り込んできたものだけではなかった。




 嘗ての地球での出来事から、現在の人々の姿を、大きくなりゆく欠片が露わにする。

滅ぼしきれなかったと惜しがる様に、1人1人に赤い光を灯していった。

それを最後に表面が黒く染まると、亀裂が奔り、塵となって砕けては、風に拭い去られた。




 仰ぎ見る4人は息を合わせた様に立ち上がると、迷いなく海に飛び込んだ。

幾つもの葉が集まりながら沈んでいく海面に、きっと、コアがいる。

その身に刻まれた、心に受けた、ありとあらゆるものを近くで見たい。

この手で救い上げたい。

そんな気持ちを、わざわざ互いに確かめ合う必要などなかった。






 そこへ、ライリーとレックスが彼等に追いつく。

頭上には守護神の竜がおり、グリフィンが4人に焦りの声を放っていた。




 潜っていく4人を見たレックスは、皆に戻れと叫ぶものの、片やその先を見たライリーは、目を見張る。

辺りがすっかり開け、穏やかさを取り戻した海の中に、白い影が浮かんでいた。




「ああ……ああ待って! 待って待って!

死ななくていい! 死ぬなっ!」



「ライリー!?」




言い終わるまでに、海水がレックスの声を断ち切る。

彼女は、白い影を目指して泳ぎ進んだ。






挿絵(By みてみん)




 海に揺られながら、ぐったりと目を閉じているその者は、他の神々とは違い、人とよく似た血色のいい肌をしていた。

首元までの砂色をした髪が頬を撫でながら、細かな緑の光を全身に瞬かせている。




 4人とライリーは、沈んでいくか弱い者の腕を取ろうとするが、反射的に手を引いてしまった。

何かが肌を這った感触に、口から気泡が大きく漏れる。

海中だというのに、目を緑に灯した数匹の昆虫が手足にへばりつき、(はね)を休めていた。

皆は堪らず払い除けると、それらは怯える様に主の元へ羽ばたいていく。




 (むし)達が行き着く先を見ると、その者の後頭部から細い木の根が網状になって現れ、頭を覆っていくのが見えた。

合間に葉を生やし、それを食そうとする昆虫が、主の身体を這い回っている。




 4人とライリーは、未だ目を開けようとしないその者に追いつくと、蟲に構わず揺さぶった。

互いに息が尽きてしまう前に、何としてでも外へ引き上げたかった。




 その者は気が付くと、やっと、両腕を緩やかに広げて皆を迎え入れようとする。

しかし、次第に開かれた瞼から漏れ出た緑の眼光は、彼等の動作を射抜く様に止めた。

煌々と光る鮮やかな瞳は、瞬く事を止めると、舐め回す様に1人1人を観察していく。

毛先や肌、目や鼻に耳と、鋭い緑の光をそれぞれの体内に滑り込ませては、弄り始めた。




 それが何とも擽ったく、4人は身を捩らせてしまう。

そうして掻き立てられていくものに、ふと動きが止まった。

不意に変わった視界を、思わず掴み取りたくなる。

だが、腕は思う様に動かなかった。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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