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※1360字でお送りします。
飛散する破片に紛れて落ちていく者を、ライリーは見逃さなかった。
激しい風圧に転覆したジェットスキーだが、尚も目標に向かって、レックスと走り続けた。
その横へ、漁船が爆風に押し流されてきたが、駆けつけたミラー族が鏡の波の壁で塞き止めた。
漁船の皆は、通過していく2人に声を張るのだが、彼等は振り向きもしない。
漸く、聳え立つ悪魔が消えたのも束の間、皆は空の異変に呆気に取られる。
粉砕したコアの欠片が収集されると、表面を徐々に広げ始めていた。
そこに映し出されていくのは、コア自身が身体に取り込んできたものだけではなかった。
嘗ての地球での出来事から、現在の人々の姿を、大きくなりゆく欠片が露わにする。
滅ぼしきれなかったと惜しがる様に、1人1人に赤い光を灯していった。
それを最後に表面が黒く染まると、亀裂が奔り、塵となって砕けては、風に拭い去られた。
仰ぎ見る4人は息を合わせた様に立ち上がると、迷いなく海に飛び込んだ。
幾つもの葉が集まりながら沈んでいく海面に、きっと、コアがいる。
その身に刻まれた、心に受けた、ありとあらゆるものを近くで見たい。
この手で救い上げたい。
そんな気持ちを、わざわざ互いに確かめ合う必要などなかった。
そこへ、ライリーとレックスが彼等に追いつく。
頭上には守護神の竜がおり、グリフィンが4人に焦りの声を放っていた。
潜っていく4人を見たレックスは、皆に戻れと叫ぶものの、片やその先を見たライリーは、目を見張る。
辺りがすっかり開け、穏やかさを取り戻した海の中に、白い影が浮かんでいた。
「ああ……ああ待って! 待って待って!
死ななくていい! 死ぬなっ!」
「ライリー!?」
言い終わるまでに、海水がレックスの声を断ち切る。
彼女は、白い影を目指して泳ぎ進んだ。
海に揺られながら、ぐったりと目を閉じているその者は、他の神々とは違い、人とよく似た血色のいい肌をしていた。
首元までの砂色をした髪が頬を撫でながら、細かな緑の光を全身に瞬かせている。
4人とライリーは、沈んでいくか弱い者の腕を取ろうとするが、反射的に手を引いてしまった。
何かが肌を這った感触に、口から気泡が大きく漏れる。
海中だというのに、目を緑に灯した数匹の昆虫が手足にへばりつき、翅を休めていた。
皆は堪らず払い除けると、それらは怯える様に主の元へ羽ばたいていく。
蟲達が行き着く先を見ると、その者の後頭部から細い木の根が網状になって現れ、頭を覆っていくのが見えた。
合間に葉を生やし、それを食そうとする昆虫が、主の身体を這い回っている。
4人とライリーは、未だ目を開けようとしないその者に追いつくと、蟲に構わず揺さぶった。
互いに息が尽きてしまう前に、何としてでも外へ引き上げたかった。
その者は気が付くと、やっと、両腕を緩やかに広げて皆を迎え入れようとする。
しかし、次第に開かれた瞼から漏れ出た緑の眼光は、彼等の動作を射抜く様に止めた。
煌々と光る鮮やかな瞳は、瞬く事を止めると、舐め回す様に1人1人を観察していく。
毛先や肌、目や鼻に耳と、鋭い緑の光をそれぞれの体内に滑り込ませては、弄り始めた。
それが何とも擽ったく、4人は身を捩らせてしまう。
そうして掻き立てられていくものに、ふと動きが止まった。
不意に変わった視界を、思わず掴み取りたくなる。
だが、腕は思う様に動かなかった。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
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インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非