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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第七話 同じ自然として 同じ魂として
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(17)




 闇に連なる数々の最悪を、淀んだ汚水や汚泥を、シェナの全身に迸る金の光の根が触れていく。

グリフィンに身を委ねたまま、長く、長く叫び続けた。




 出す事を許されなかった声が、救うためのものに変わった。

奇妙と罵られてきた声の正体を、やっと知る事ができた。

そして(ようや)く、自分を受け入れられた。

売られ、買われてを繰り返した後、辿り着いた島で、シェナという人間として再び生かされた。

また、風の人として神に求められた。




 耳を塞いでいた両手が、首ごと大きく落ちてしまう。

脱力しきった身体は尽き、声は枯れた。

そして、途轍もなく暗く、苦しい闇の空間は、コアは、内側からの大旋風によって爆発した。






 コアの麓から天に向けて炸裂音が迸り、身体や腕が砕け散る。

仮面に金の光の亀裂が走ると、これを最後に、完全に打ち砕かれた。






 グリフィンとシェナが1つになったまま落ちていく傍ら、風圧に耐えた守護神の竜が飛び立ち、2人を背中で受け止め、そのまま島を目指した。

先に落下した3人は、(サメ)(シャチ)に拾われ、2人の無事を気にして竜を仰ぎ見る。




 シャンディアは慌ててコアの元居た場所に向かった。その真上では、リヴィアも接近している。




 降り注ぐ瓦礫の中に紛れるのは、別の何かが力尽きた姿だ。

人の形をしたそれは、他の神々と同じ背丈をしている。

シルクの様な白い衣には、土を思わせる淡い茶色のグラデーションが描かれ、揺らめいていた。




 リヴィアが宙の半ばで、どうにかその者を受け止めたのも束の間――無数の細かな緑の光と、木の根が蠢き、その者を包んでしまう。

リヴィアは、大きく払い除けられてしまった。




 下で受け止めようとしていたシャンディアもまた、蠢くそれらに視界を遮られ、振り解かれる。




 光と根の塊は、そのまま海に落ちると同時に激しい羽音が立った。

周囲は忽ち肌を粟立たせ、悲鳴を上げる。




「ぶえっ! 虫じゃねぇかっ!」



「きゃっ! 身体がっ!

ちょっと、止めてっ! 止めてよっ!」




鮫の背中にいるジェドとフィオは、全身に纏わりつく蟲の大群を払い除ける。




「……こんなアメンボ(ウォーターストライダー)いるか?

目が緑に光ってやがる」




ビクターもまた、身体を覆い尽くされていたのだが、それよりも、見た事のない目を持つウミアメンボに釘付けになる。




 ちっぽけな白い身体よりも、鋭い緑に光る目玉が際立っていた。

それだけでなく、この場で見るにはありえない、ありとあらゆる同じ目を持つ昆虫が群を成し、海中を目指して真っ逆さまに飛行していく。




 それを迎え入れる様に、海面から細い木の枝や蔓が柔らかに伸びると、濃緑の葉を舞わせながら再び海中に姿を消した。




挿絵(By みてみん)









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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