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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第七話 同じ自然として 同じ魂として
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(15)




 漁船の見張り台で指揮を執るシェナは、ロープを握り締める。

だが、足元から脳天にまで一気に寒気が迸った。

もう一息、コアを鎮めるための力がいると勘付く。

怒りに言葉を失くしたコアの身体は、影を揺らしながらも確かな肉体を持っていると見ていた。




 シェナは見張り台の縁を踏ん張り、目を凝らすと、大きくて温かい何かが身を包んできた。

振り返ると、息を切らせたグリフィンがおり、目や頬を優しく拭ってくる。




「泣いてでもやるべき事なのか……?」




シェナは独りでミラー族と漁船を我武者羅に導いており、彼にそうされるまで、自分が涙している事に気付いていなかった。




 グリフィンは、彼女の小さな身体に詰まりに詰まったものが、そのまま彼女自身を壊してしまわないよう、肩から抱き寄せる。

そして、シェナの頬や首を這う金の光を見つめた。




「……どうするつもりだ?」



「コアにも心があるから、そこに行かないといけない……でもそこは……そこは凄く暗くてっ……暗いのは嫌っ……」




ただ暗いなんてものではない。

シェナは、そこが恐ろしい闇の空間であるという事が、まるで直に触れる様に感じてならなかった。

感情が身体に追いつかず、涙が溢れてしまう。

それでも喉は炎の様に温かく、眩しく光り続け、彼女の全身を緩やかに這い続けていた。




 時間がないと、グリフィンはもう一度シェナの顔を拭い、脇から強く抱きかかえる。




「暗いもんか。

君は光そのものだから、そこを照らしてやれるよ。

俺も行く」




シェナはグリフィンを見上げ、首を激しく振るのだが、声を発する前に口を指先で押さえられてしまう。




「終わらせるぞ。

そして今度は、君が本当は誰なのか、新しい話を聞かせてくれ。空島から帰った夜みたいに。それも必ず伝説にできる。

まだ本は出来上がっちゃいないんだ。泣いてる場合じゃないぞ」




ある時を境に、すっかり風やミラー族を操るようになったシェナの変化を、見逃してなどいない。

誰にも見えないものを感じ、問題を見定めて解決しようと、武者震いの様なものを起こす彼女に、最後まで寄り添いたかった。

1人では不安な事は、2人でも3人でも、誰かと共にやればいい。

支えが丈夫であればあるほど、持ち堪えられるのだから。




 グリフィンはシェナの頭を撫でると、共に見張り台の縁に立つ。




 真下では、コアに接近する3人と、その周りからミラー族と精霊達と竜の光の渦が巻き起こっていた。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
どうもです! 凄い展開ですね! ライリーの壮絶な過去には思わず絶句してしまいました! 悪環境の中、光を見出だしたのでもなく、ようやくにして、出会えた優しい人( ;∀;) 既にクライマックスを思わされま…
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