(13)
フィオはシャンディアと別れると、再びコアに向かって駆けた。
先のジェドとビクターが、鏡の路でコアの行く手を阻もうと、宙を幾多の方角に向かって走り、網の様な隔たりを生み出している。
コアは、そこから聞こえる耳障りな人々の声や音ごと叩き潰し、2人から足場を奪っていく。
飛散した欠片に透かさず魔力を放つと、後を追いかけてくる神々に投擲した。
ミラー族は、鏡の銛や槍、生み出したブーメランで薙ぎ払いながら、コアを追う。
続く鮫や鯱は、跳躍しては噛み砕き、海豚は尾鰭で華麗に打ち返していく。
合間に飛び交う雲丹の棘の射撃が、欠片を更に砕いていった。
糸海月が伸ばす脚が、コアを掴もうと海中で光を漲らせる。
それに拍車をかける様に、蛸が鏡の墨を噴いて沈めにかかった。
身を躱すのがやっとのコアは、焦燥に息を荒げ、逃走を止める。
そこへ瞬く間に降り注ぐのは、炎と雷の雨だ。
数々の竜の威嚇が飛び交うところ、コアは腹に揺らめく僅かな光を小さな砲弾に変え、空の神に放っていく。
この時、隙を突かれ、鏡の墨と脚によって完全に拘束された。
コアが、海中からの引張力に抗うところ、視界に鏡のロブスター達が舞い込む。
彼等はコアの仮面を取り払おうと、太く、厳めしい鏡の鋏を振り下ろした。
コアが躱すのが先か――仮面の嘴で、ロブスター達を激しく薙ぎ払う。
体勢を崩した彼等は、飛行する空の神々に向かって打ち返された。
フィオは、行き交う攻撃を前に思わず立ち止まる。
そして、シェナはどうしたのかと辺りを見回した。
島を見る限り漁船は着いておらず、この場にもいない。
あのキューブから飛び出してから、彼女も変わってしまっている事には気付いていた。
もしやもう、彼女はシェナではなくなってしまっているのだろうか。
そんな不安と寂しさが、胸を刺す様にして押し寄せる。
途端、コアによる衝撃波や先の皆が抗う騒動を目にすると、反射的に激戦区へ駆けていた。
シェナの合流を願いながら、崩れかかるコアを救おうと、鏡の路が導いていく。
ジェドとビクターの路から放たれる多くの幸福の数々に、コアの意識が朦朧としていた。
その時、腹に小さな灰色の光が1つ灯ると、コアは僅かに顔を上げる。
違和感を覚えたジェドは、光が流れてきた先を目だけで辿った。
「……ジェットスキー?
……レックスじゃねぇか!」
その後ろにライリーを見ると、焦りが込み上げる。
彼等が接近しようものならば、瞬く間に沈められてしまう。
ジェドは直ちに2人を止めに向かおうと、宙を走りかけた次の瞬間――力に縋る様に身を起こしたコアが、彼の足場を砕き、行く手を阻んだ。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
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その他作品も含め
気が向きましたら是非