(12)
ライリーは痛みに顔を歪めていると、降り続ける細かな欠片が身体を叩きつけた。
どういう訳か、それらの衝撃を受けている内に、やり場のない感情が抜け、心身が軽くなっていく。
震える手で汗を拭いながら、打ちつけてくる1つ1つの欠片を見つめた。
涙は乾き、体温が下がっていくと共に、欠片が燻んで灰色の光を灯していく。
それらは弱々しく浮遊すると、コアへ引き返していく。
(ああ……そう……あんたは、どうしようもない馬鹿よ……)
攻撃されながらも、大地はまだ、吸い取ろうとしていた。
気付いたライリーは、もうコアから目を背ける事をしなくなる。
(あんたは優し過ぎた……良い物ばかり残そうとして……でも、どうしてもそうしたかった……本当は、人の幸せが好きなんでしょ……)
縋る事や甘える事は、何ら悪い事ではない。情けない事などあるものか。
(あんたは弱いんじゃない……助けるのは、未来に繋げるため……)
レックスの肩を掴んでいる両手を震わせながら、背中を伸ばしていく。
(消えなくていい……こんな私が生きてるの……だからあんたも、生きていて……)
再び涙を堪えながら、歪み果てた姿と向き合おうとつま先立ちになった。
「さっさとしてよ!
ちっとも追いつかないじゃない!」
ライリーは目を尖らせると、レックスを叩きつけた。
「しょぼいエンジンしかねぇんだ、分かってんだろ!
向こうだって、おっかねぇ力で走ってんだぞ!」
一定の範囲を巡るコアの周りを、宙を走り抜ける3人の鏡の路が取り囲もうとしていた。
合間で飛び交う青い炎や白銀の閃光の数々に、多くの獣の威嚇の声が混ざり合う。
事態を治めようと向けられる多くの刃に、ライリーの息が震える。
(あんたを赦す者は、そうはいない……それでも私は、真っ先にあんたに触れてあげる……そしてあんたを恕す……未来のために……)
自分のための決断を漸くできたのだろう。
やっとの想いで、人類を消すという、愚かでありながらも快楽な決断を下したのだ。
(ずっと綺麗な心で在れるわけないでしょうが……そう在る事を目指すにしても……傷つかなきゃ分かりっこない……)
コアの擦れた悲鳴を耳にした時、ライリーは零れた一筋を拭うと、脆くなりゆく闇に目を光らせる。
(あんたに生かされてきた。
だから共存しましょうよ。
姿が違うなんて関係ない。
これは、そう……必要な事よ……)
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
投稿通知・作品画像宣伝中
インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非