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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第七話 同じ自然として 同じ魂として
108/154

(9)




 長老は、崩れて小さくなるライリーの肩を掴むと、冷え切った身体を擦ろうとする。

だが、その手は呆気なく落ちてしまった。

ライリーは反射的に彼の手を握り返す。




「人が、大地に()すならば……コアの傍にいよう……また、そこにお前さんが知る者がおるならば……わしが改めて尽くそう……お前さんが今……ここで尽くす様に……」




長老は(ようや)く、一呼吸置く様に目を閉じた。

これに動揺する周囲だが、ライリーは崩れた顔を上げると、彼の息を確認する。

急に穏やかな寝息を立てるなど赤子ではあるまいしと、(はな)をすすった。

その束の間、長老の微笑みが覗えた。




 再び、沖から激しい攻撃音が轟く。

見ると、宙のそこら中を太い路が伸びて舞っていた。

巨大な蛸が出たと、麓で子ども達の騒ぎ声がする。

宙を自由自在に練り動くそれらの表面には、明け方の空が見せ始めている仄かな明かりを反射させている。




 ライリーは(おもむろ)に立ち上がると、遥か先で崩落しかかるコアを見た。

そこに淀む苦難する声が、ずっと耳に届いてならなかった。

この高台に移る前、静かにそれに聞き入っていた。

きっとその声を最後まで聞いてやれるのは、自分なのかもしれない。

姿こそ大きくても、遥かに小さい者。取り囲む数々の声の深部から、痛みに悲鳴を上げている真の存在が、もうすぐ消されてしまう。




「おいライリー、どこへいくんだ! 戻れ!」




レオの声を押し退けた彼女は、高台から飛び降りると地面を転げた。

が、乱暴に立ち上がっては波打ち際へ疾走する。




 事態に備えていた人々が、向かい来るライリーを慌てて止めようとした。

それに追いつこうとするレオだが、張られた鏡の結界や、沖からの反射光、神々による攻撃の光が、割れたサングラスの隙間を縫って襲いかかる。

無茶をするなと彼を止めたのは、居ても立っても居られなくなったスタンリーだった。

スタンリーはその足で、聞き分けのないライリーを怒鳴り、連れ戻そうとする。




「いい加減にしろ!

仮にあんなもんの治療ができたとしても、その必要はあらん! 人類の敵だぞ!」



「黙れっ! それ以上近付かないでっ!」




彼女は突如ナイフを突き出し、皆の喉が詰まる。

だが一方で、その場で統率を取っていたレックスは、彼女がその気でないという事をすぐに悟った。

来る前よりも顔を赤くさせ、涙を呑もうと必死になる声が漏れている。

彼女は治す者であり、殺しなどできない者だ。




 誰も言葉を返せないまま、両手を震わせながら上げる。

ライリーは向きを変えないまま後退(あとずさ)ると、鏡の帳に拳を打ちつけた。

向こう側のミラー族が振り向くと、事態に眉を寄せて小首を傾げる。




「ここ開けて! 早く! 私を連れていきなさい!」









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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