(6)
棘に貫かれたコアが、高波の攻撃で漁船を弄ぶ様を目の当たりにした人々は、声を上げずにはいられなかった。
しかしそこに、突如として吹きつけた熱風に身を揺さぶられた。
意識的な風は、ミラー族の体勢までもを崩させるほどだった。
それからというもの、コアの激しい反撃が更に人々を不安に陥れていく。
襲いかかる守護神の竜の限界を悟ると、放つ言葉もなかった。
周囲の騒ぎから状況を察するのが精一杯の長老は、簡易的に設けられた高台で仰向けになっていた。
傍のアリーやアイザックは、今にも気を失いかけている彼を叩き起こし続ける。
瓦礫の下敷きになった影響で、呼吸が不安定になっていた。
その時、麓から子ども達の騒ぎ声がした。
皆は、彼等が指差す方を仰ぎ見ると、先程まで沖で暴走していた守護神の竜が近付いて来る。
その後方には使者の竜達が連なり、島の真上を旋回していく、と
「ジェドだ! こっちだ、おりてこいよ!」
「ああ! むこうに いっちゃうわよ!?」
ケビンとクロイが声を合わせて飛び跳ねる横では、ウィルとリサが、ジェドの指示で降下する使者の竜達に飛び上がる。
「うわああっ! まただ! あいつら、またくるぞ!」
「はやくっ! ちっちゃくなって!
しゅかーとがたいへん!」
リサは両膝を服の中に捻じ込み、攫われないよう丸くなる。
しかし竜達は、島を囲む様に低く旋回し続けるだけだった。
時折、青い火を細く吹きながら、真っ青な眼光を点滅させている。
まるで互いに会話をする様で、飛行の位置が上下に順に入れ替わっていった。
そのまま、波打ち際のミラー族に、眼光に強弱をつけて何かを訴えている。
ミラー族は、手早く鏡の結界を上げ始めた。
レックスや他の皆は焦るのだが、引き上げられた結界は薄く、沖の様子が眺められる。
ミラー族は人々に小さく頷くと、結界の外で武器を構え、竜達と共に守る態勢に入った。
片や、高台での騒ぎが、浜に備えていた者達を振り向かせる。
涙ぐんだアリーと、冷静さを欠いたアイザックが、長老をひっきりなしに呼んでいた。
彼は息をするものの、目を開けず、胸を押さえている。
「まずいぞ……ライリー!
島の長が死にかかっとる!」
声を上げたスタンリーもまた、高台に避難していた。
その木の真下を、既にライリーが走り抜けていく。
近くのレオがそれを見兼ね、半ばまで木を下ると飛んで着地し、彼女の後を追った。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
投稿通知・作品画像宣伝中
インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非