(5)
少し遡って、島での様子をお送りします。
島では、戦える者達で武器を取り、沖の事態に目を凝らしていた。
波の攻撃に備え、速やかに行動できない者は高台で身を潜めている。
子ども達は、高台の麓で拳を握って立っていた。
空と海の神々と共に戦っている4人やグリフィン、漁師達をただ見ている事しかできない自分達に、歯痒さばかりが増していく。
両親や周りからの指示を、どうしてもきけなかった。
きいていられなかった。
自分達の足や、登る力を、甘く見ないでもらいたかった。
共にもっと外へ連れ出してほしい。
小さいからといって、奥へ仕舞われる様に追いやられたくなかった。
この島の番をするのは、同じ小さな仲間同士の約束だ。
そして、帰って来た4人を見返してやりたい。
コアの攻撃と共に鮮やかな煌めきを散らす神々の光に、釘付けになっていた。
合間に響く地鳴りや、足を取ってくる地震に、もう怯えはしない。
コアに打ち勝つためにも転げてばかりではいけないと、誰1人涙を流さず沖を睨んでいた。
その時、波打ち際から颯爽と飛び出しては鰭を仕舞い、着地したのは複数のミラー族だ。
何事かと人々が目を見張るのも束の間、厚い鏡の結界が引き上げられていく。
皆はそれに慌て、現れたミラー族に迫った。
「眩まさないでくれ! 俺達の仲間が命張ってんのに、せめて見守らせろ!」
レックスは鏡の鎧を纏ったミラー族の肩を掴み、訴える。
本来ならば自分も向こうに参戦できていたところだが、足が言う事をきかないままだった。
困難が立て続けに起きた事で、患部に巻かれた布に血が滲んでいる。
それでも、痛みなどそっちのけに駆け回り、人々の安全に尽力し続けていた。
レックスに術を阻まれ、鏡の結界が半身の位置で止まる。
この時、鎧を纏うミラー族がレックスの足の怪我を見ると、瞬時にそこに触れた。
白銀の光が患部を包んでいくと、その者はあっさりと布を剥ぎ取ってみせる。
回復した足が露わになると、レックスは顔を一変させてミラー族の手を握った。
だがミラー族も人々を守ろうと懸命だ。
声を持たない彼等の表情が険しくなると、結界を張らない選択はないと訴える様に首を振り、人々を押し退けてしまう。
その刹那、沖からの破壊音に皆が身を弾ませた。
真横に傾いた漁船の麓から、幾千もの太い鏡の棘が長く伸び、コアを貫いていた。
人々や子ども達はこれに声を上げ、この場に駆けつけたミラー族すら呆気に取られている。
彼等が鏡の双眼を見開き、唇と共に震わせる様は、恐れ戦いているそれだろうと、レックスは半ば足を竦めた。
ミラー族の手は、じきに、其々の肩や胸にある装飾に徐に触れられると、まるで祈る姿勢を見せていく。
ふと、レックスは、彼等にとっても信じ難い術であると察すると、再び、沖の事態に向けて心構えをした。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
投稿通知・作品画像宣伝中
インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非